建築から学ぶこと

2014/09/10

No. 440

災害の夏を越えて

この夏は猛暑の印象は薄かったが、そのかわり全国各地で豪雨に起因した災害が頻発したことが印象に残る。京都府福知山市市街地ほか近接する地域での浸水被害があり、また広島や長野での土石流がもたらした災害など、限られた時間に特定地域に降雨が集中し、大きな被害が出た。一方で、8月初めに、気象庁が開発した予報システム「高解像度降水ナウキャスト」がスタートして、30分先まで5分ごとの降水域分布が、5分ごとに提供されるようになっていた。それも250m四方の細かさであり、自宅に台風が近づいた折には大いに参考にした。広島でこのシステムがうまく避難行動などに活用できていたら、土石流にある程度対応できたかもしれない。今後は地域ごとにこのような気象情報をさらにカスタマイズしてゆく必要もあるだろう。広島の当該地に限らず、居住地の位置や土地の性状によって危険度には開きが生じるはずだからである。その上で、公と私がどのように情報を共有し、役割を分担するかがポイントとなる。

さて過日、和歌山を訪れる機会があった。この地は2011年の和歌山・奈良県南部を中心とした紀伊半島大水害の記憶が新しいのだが、毎年のように豪雨に見舞われ、また将来の地震の影響を受ける可能性も高い。海岸に近いところに県下の街の多くが位置しているために、建築の安全性、インフラの維持にはさまざまな準備がなされており、行政と民間の連携も図られている(「和歌山県・被災建築物応急危険度判定士認定制度」など)。和歌山は高野山や熊野のような歴史的建築群や、湯浅のような歴史的街区、そして豊かな自然に恵まれた場所でもあり、それらと地域の経済をいかに次世代に受け渡してゆくかについて待ったなしの課題があるが、これらを乗り越える知恵もまた豊富に有していると言えるだろう。

佐野吉彦

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