建築から学ぶこと

2014/11/19

No. 450

語って面白く、反応を感じてなお面白く

前回紹介したツアーの参加者はほとんどがオトナの市民だった。彼らに建築の魅力や見方をうまく伝えることができれば、建築に関しての市民力が上がる成果をもたらすだろう、そう考えて臨んだのである。こういうツアーでの経験以外では、数年前にミッションスクールの保護者の前で行った講演が、同じような思いで取り組んだものだった。このときは、主催者から、あまり質問は出ないでしょうと事前説明を受けていたのに、質問がなかなか止まらなかった。その時の、この学校に建っている建築の歴史的な背景や意味を解き明かす話を、聴衆は新鮮に感じたのかもしれない。

講演では、自慢も手柄話もしない。とりわけ、敏感な世代である学生に語るときには、できるだけ彼ら自身で考えを深めるように話を進めるようにしている。これまで国内外で、建築の学生相手の講演を何度も経験して、そのあたりは慣れている。だが今回、小学5年生対象の講演依頼があった時には、少しばかり考えこんでしまった。そんなときに伊東豊雄さんが番組の中で、小学生に模型でコミュニティ施設の案をつくらせるワークショップをやっているのを観て、俄然ファイトが湧いた。そうだ、これからの子供たちにはBIM、すなわち3次元で案をつくらせた方が面白んじゃないか、と。

本番では2時限を割り当てられ、前半で地域の身近な建築を紹介して基礎情報を与えながら、後半・2時限目で学校大改造計画案作成に移った。詳しい様子は下記のリンクで見ていただくとして、良い解答は、「着想を広げること」と「手を動かして確認すること」の両方向から追求することを知ってもらうことはできた。そのプロセスにある「もどかしい思い」も実感してもらえたかと思う。もう一つ大事なこと、つまり「良い解答とは美しい解答でもある」ところまでたどりつくには、じつは少し時間が足りなかった。ところでこの日の最初と最後に、建築の道を目指したい人がどれだけいるかを聞いてみた。最初はクラスで1-2人、最後には全体の2/3。この日をきっかけに本気になったとしたら、とても嬉しい。

 

当日の詳しい内容は家入龍太さんのレポートまたはTODAY!をご覧ください。

佐野吉彦

アーカイブ

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

お問い合わせ

ご相談などにつきましては、以下よりお問い合わせください。