建築から学ぶこと

2014/12/17

No. 454

重ねあわせた思い、サントリーホールにて

安井建築設計事務所創立90年目の今年は、もともと対外的広報のクライマックスにしようと考えていた。年度が変わる直前の3月に、長年にわたるリーダーであった佐野正一が亡くなったので、その顕彰もメニューに加えることにした。6月にロイヤルホテル(大阪)でお別れの会を開催したおり、よくある業績を偲ぶパネル展示は、通常その場限りで廃棄するしかないと聞かされたので、折りたたみ可能な布製のスクリーンに作品と解説を印刷して吊るし、再活用できるよう設営した(第429回)。これは2013年に日本建築家協会とリトアニア建築家協会が共催した展示(私が実行委員長)で用いたものと似た手法。設計者の業績をきれいに表現しようとしたのである。

このスクリーンは、秋の「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪」(第449回)などで用い、さらに年の暮のサントリーホールブルーローズ(小ホール)で企画・開催した行事「サントリーホール:つくった情熱、育てる意思」に内容を加えて移設展示した。このサントリーホールでは、バックステージツアーを90周年記念メニューとしてリストアップしていたが、ホール設計者・佐野正一と、あわせてサントリーホールのファウンダーである佐治敬三氏を偲ぶ意味あいを含ませ、演奏とトーク、ギャラリーとレセプションを重ねあわせた内容にまとめた。

開催された12月10日の午後は、それらのメニューが対等の価値を持つよう、時間を切り分けたのがポイントである。「ながら聴き」や「中座」がないようにし、各場面に登場するプロの表現をクローズアップし、来訪者がそれに集中できるようにした。このように、さまざまな場のプロが実力を示し、相互の技量に敬意を払いあうかたちこそ、望ましい公共空間の姿ではないか。その趣旨に沿って、建築の設計者が建築主や社会と意識を共有しながら建築をつくり、ともに慈しんでゆくプロセスはとてもいい姿だと思う(サントリーホールよ永遠なれ!)。

「サントリーホール:つくった情熱、育てる意思」の詳細はTODAY!に掲載しています。

佐野吉彦

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