建築から学ぶこと

2015/09/02

No. 488

建築家はどのように社会的使命を果たすのか

縁あって、標記のタイトルで講演(卓話)する機会を得た。場所は福岡西ロータリークラブの例会である。世界に活動が広がるロータリークラブは<職業を通じた社会奉仕>という精神を謳っているが、これはそれぞれが専修する職業能力を社会のために積極的に用いるべしという意味である。日常業務において正当に業務にいそしみ、関わりあう者に益をもたらし、社会に幸福をもたらすことは基本的な社会行動である一方、手を差し伸べるべき局面では、惜しみなく専門能力を提供するべきとされる。しかも、それらは使い分けではなく、両輪として発動すべきものなのである。講演の依頼を受けたときに、この場ではそういう話なら共感していただけるだろうと感じて、臨んだ。この日はまず<(1)職業におけるルールとモラル:建築の場合>について語った。建築家には、建築士法をはじめとする法律で定められる義務と責任があるが、法律の制定以前から職業モラルは歴史の中で天与のものとして定まってきたと述べた。続いて<(2)建築主と建築家とのめぐりあい>について。両者がどうやって出会い、選ばれるのかを事例を挙げて紹介し、そこには友好の空気が育まれるべきと語った。それがあればこそ、できあがった建築が取り巻く社会にうまく溶け込んでゆくものである。

次の項目<(3)建築家の能力を活かした社会活動とは>には災害復興と途上国の開発支援等が含まれるのだが、専門家自らが、社会における建築の価値と役割にスポットライトを当てる地道な作業も重要だと付け加える。締めくくりの<(4)地域に根ざした専門家であるために>では、コミュニティのために専門能力、とりわけ建築家の場合はかたちを構想する能力を提供すべきと述べた。このような積極的に人と人をつなぐ行動のなかで、人と地域・自分自身がともに成長してゆくことの意義に触れた。

それにしても、話すことは自分のためになる。最後に、アメリカ建築家協会(AIA)が建築家の使命を明瞭に紹介した魅力的なビデオクリップ「look up」を映してこの日の話をまとめてみた。

佐野吉彦

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