建築から学ぶこと

2016/04/27

No. 521

100年企業にある使命感

今年は創立100周年を迎える企業が2162社あるという。すでに100周年を迎えた企業のなかでは、1907年の2343社、1912年の2243社に次ぐ。1916年の創業は、第一次世界大戦中の「大戦景気」が背中を押しているようだ(東京商工リサーチの調べ2015.11による)。200年企業も約1200社あり、この持続力は日本が世界に向けて誇るべきものであろう。さて先ごろ、知人が経営する技術系2社それぞれが100周年を祝う会を開催することになり、2日連続しておじゃまする機会を得たので、彼らの企業にある長寿の秘訣とはいったい何かを考えてみた。
ひとつは、創業者の信念。モラルの根幹が揺るがなかったということである。それは、冷静に経営の行く手を見定めながら、うまく経営の承継ができたことをも示している。カリスマ創業者の持つ志をどのように受け渡し受け継ぐかは重要である。もうひとつは、保有技術とビジネスにおけるイノベーションである。企業は社会環境とともに興り、技術を適合させてゆくわけだが、時代とともに衰退するわけにはゆかない。そこで変化を先取りした大胆なジャンプができたかどうか。祝う会の2社とも、技術の絞込みや企業買収などの果敢なチャレンジがあった。一方で、そこで失敗した企業も多かったはずで、慧眼であることと幸運であることの両輪は100周年の条件と言えそうである。
さらにもうひとつは、人との縁づくりである。保有技術が市場に出てゆくには顧客や提携企業との関係を安定化、あるいは活性化させなければならない。そのために技術を積極的に公開し、結果としての市場拡大を志向する企業は、広く尊敬を集めるであろう。こうしてみると100年企業から学ぶことは多い。彼らは、生き延びることを社会的使命、地域における使命と感じている。

佐野吉彦

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