建築から学ぶこと

2016/10/12

No. 543

希望を共有したひととき、10月6日

この100年にはいくども戦争があり、人類はさまざまな難局に直面してきた。それでも、入江昭さん(外交史学者、ハーバード大学名誉教授)は、世界が悪い方向に転じたとは考えない。この世紀には多くの国際的なつながりが生まれ、人類は歴史を共有するひとつのコミュニティになってきた、という。入江さんは、20世紀に希望を見ようとする。それを支えることになるのはグローバルに広がった個人と個人の多様なつながりであり、建築や音楽のような共通言語が大きな役目を果たしてゆくだろう、と。これは、私がAIA(アメリカ建築家協会)の名誉フェロー会員(Honorary Fellow AIA)称号を授与されたことを記念する会<海を越える友情に感謝し、われわれのこれからを展望する会>(サントリーホール、10月6日)での「歴史の中の20世紀」と題しておこなわれた短い講演でのことばである。

いま、建築を生み出す者の社会的使命は、地域において重みを増すだけでなく、国境を越えて広がっている。人と人とが信頼をつなぎあうために、あらたな希望をもたらすために、専門能力を活用する責任があるのだ。そう考えれば、今回の私への称号授与にAIAは、次のようなメッセージをこめているとも感じられる。望ましい地域社会と世界をつくるためには、専門家としてより大きく目を開き、技術と知識を高め、どの場所どの場面でも真摯に取り組め、と。今回お招きした入江さんとは事前に細かい打ち合わせをしたわけではなかったが、その講演は私の思いと呼応しあうものとなった。この日はNHK交響楽団の木管アンサンブルのぬくもりのある演奏をはさみながら、明日のために広く知恵を結集しようではないかという呼びかけをおこない、それを確認しあうための懇親の場を用意してみた。

佐野吉彦

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