建築から学ぶこと

2016/11/30

No. 550

審査することの役目

作品の審査とは、緊張感とわくわく感に満ちたものである。今年はBCS賞(日本建設業連合会)選考委員に加わり、建築学科の学生の作品もいくつか審査した。こども絵画コンクール、というのもあった。それらは知的刺激の機会であるとともに、専門家としての精神を奮い立たせるものとなる。BCS賞での現地審査では、発注者と設計者と施工者が共通の地平に立って成果を達成するプロセスに触れることができるので、果たしてどのような距離感から成果が生み出されているかが確認できる。建築とは何と多くの情報が束ね合わさったものであろうか。それゆえに、どの場面においても、設計者は節度を弁えながら、どこまでも能動的な役割を果たすべきだと感じた。ちなみに、優れた学生による「個人」の図面では、将来かかわることになる作業プロセスの予兆を感じ取っていたように思う。振り返ってみれば、審査とは客観的な立場ながら、その作品の価値を汲み上げる重要な役目を果たす仕事であった。
ところで過日、オバマ大統領が2016年の「大統領自由勲章」を選定・授与した。文民の栄誉を称えるもので、今年は21名。オバマの8年の任期では123名を数える。大統領の趣向は確実に反映されるもので、ジョージ・W・ブッシュによるチャールトン・ヘストン(映画、2003)、オバマによるトニ・モリスン(小説、2012)などにその「色」を感じる。建築家の受章者は比較的少ないけれども、ジョンソンによるミース・ファン・デル・ローエ(1963)、レーガンによるバックミンスター・フラー(1983)、ジョージ・H・W・ブッシュ(父)によるI・M・ペイ(1993)、そして今年のフランクゲーリーやマヤ・リンといったラインアップを見ると、ここにもかすかに「色」が感じられて面白い。それぞれの大統領が、米国にとって価値ある人物をそのように捉えた。まさしく重要な役目である。

佐野吉彦

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