建築から学ぶこと

2017/06/14

No. 577

束ねること、そのために踏み出すこと

この春に日本建築学会会長に就任した古谷誠章さんは、会報「建築雑誌」6月号で、今後の建築界のさらなる発展のために、と前置きしながら次のように述べている。「建築5会の連携のさらなる強化、各団体の特徴と個性を互いに尊重し維持しつつも、ここぞというときの個別課題の特性に応じた、一丸となった共同提案の推進や、対国際社会的なフェデレーション結束の呼び掛けを行います。国際的な建築市場のなかでも、本会の研究力や知見を活かした日本の建築学のイニシアチブを発揮します」というものだ。
5会(5団体:建築士会、建築士事務所協会、建築家協会、日建連、そして学会)にある固有の蓄積と切り口、そしてプライドの差異は、じつは社会からも、国外から見ても、明快な説明が立てにくい。それは不利と言えるだろう。これを現実的に結び合わせてゆくためには、まさに「ここぞというとき」から始めるのが良い。たとえば建築士法改正やUIA2011東京大会の運営において、連携は効果的であったが、そうした乗り入れは意識的に取り組むべきであろう。古谷さんの踏み込んだ表明に大いに期待したい。
同じ「建築雑誌」の5月号の中で、前・日本建築家協会会長であった芦原太郎さんが記しているのも同じような視点である。ここでは、団体固有の表彰制度の良さを認めつつ、それらの応募フォーマットを共有・連動させた「建築グランプリ」創設の提案がなされている。こうした、少し軽やかさを宿した連携の提唱は、社会に対する建築界の発信力獲得につながる可能性がある。建築に備わっているポジティブな力を活かすには、そこにかかわりあう人々をどう束ねるかに知恵を使うべきである。議論するだけでは何も生まれないので、束ねることの具体的成果をひとつずつ積み重ねる。それは次の展開をさらに生むであろう。皆そのことは想像できているはずだが。

 

付記 ちなみに、古谷さんは次のようにも書いており、さらに明瞭な意思を表明している。「建築界の信用を取り戻し、市民社会に信頼され、真に国民に望まれるものとするために、各分野の研究者と実務者が一体となった建築の専門家職能の確立と、よりよい建築・都市計画の企画・発注・維持管理システムの構築、ならびにその実証と検証を行います」

佐野吉彦

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