建築から学ぶこと

2018/06/13

No. 626

その提言に至るまで

去る6月5日、建築設計3団体は「建築士資格制度の改善に関する共同提案」を整えた。3団体とは日本建築士事務所協会連合会・日本建築士会連合会・日本建築家協会という顔ぶれであり、2015年施行の建築士法改正のために連携した経験が、今回の提言を実らせる土壌となっている。今回の提案の主たるところは<建築士試験制度の運用の柔軟化>で、付帯して<建築士の業務領域の拡大>を謳い、また<建築士の実態把握、建築士定期講習の改善>の必要を訴えた。結果的に3団体は2ヶ月ほどで意向調整を完了したが、構成単位と設立の拠りどころが異なる団体を取りまとめるのは簡単ではない。一番楽な処理として、3団体の主張の差異が少ない主提案に限定し、それぞれのこだわりに思いがある付帯提案部分は行わない選択があった。だが、今後も時宜を得た改善を積極的に提言し続けるために、2015年改正の共同作業でできた土壌をさらに耕すことは重要である。結果的に、付帯提案の調整において3団体は汗をかき、知恵を絞って果実を得ることになる。
建築士法については、1950年のスタートからまもなく70年に達する。日本独自の専門家資格制度は、日本の建築教育制度とともに定着した。それらの国際的理解も進む一方、2015年の法改正では、建築設計者・組織の立場に重み付けがなされるなど改良が加えられる。こうして建築士資格制度は、アーキテクトとエンジニア双方に適切なモチベーションを与えるものとなってきた。今後は、制度に立脚した専門家が国際的な場面でも競争力を持てるかが大切である。その力を醸成する役割は民間団体が積極的に担うことになるだろう。今回の合意には、こうした現状認識があると考える。
ところで、民主主義国においては、個人と国家の間に様々な集団がある。それらが自立的・自発的に動けば、社会に有益なプラットフォームができあがる。その意味で、日本の建築を支える団体が忌憚のない議論を尽くして成果を導いたことは誇ってよい。ちなみに私は3会のうちの「一番長い名前の会」の責任者としてこの提案を集約する立場にあった。

佐野吉彦

提言書(日本建築士事務所協会連合会のウェブサイトをご参照ください)

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