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大阪・山本能楽堂を視察 改修事業の取り組み

4月30日(火)の当コーナーでご紹介しました当社の社内表彰選定プロジェクト「山本能楽堂」で、7月17日(水)、「能楽堂の視察・能楽鑑賞会」が開催されました。一般社団法人関西経済同友会/芸術・文化委員会の活動の一環として、参加されたメンバー(約30名)を対象とした勉強会に、当社広報部も同席させていただき、「ナマの能楽堂」を初めて体感しました。

 

 山本能楽堂は昭和2年に現在地に創設され、大阪大空襲で消失後、昭和25年に全国でいちはやく再建された大阪に現存する能楽堂で最も古いものです。平成18年には国登録有形文化財にも指定されています。

プログラムの冒頭、当社社長・佐野から「山本能楽堂の改装について」の解説を行いましたので、TODAY!レポートとしてご紹介します。

 

 この改修プロジェクトは、文化庁の「重要建造物等公開活用事業」の採択を受け、平成23年から3年度をかけて実施しています。設計監理を担当した当社から改修のポイントとして以下を説明しました。

●改修プロジェクトの目的は大きく3つ/能楽堂という良質の公演とそのための鍛錬が日々行われるという機能を維持しながら、(1)建築の経年変化に対処すること。(2)時代のニーズに合わせた改修を行うこと。(3)耐震性能を高めること。

改修工事のようす(2012年10月) 右:壁にプロジェクターで4ヶ国語の字幕などを投影する調整

改修工事のようす(2012年10月) 右:壁にプロジェクターで4ヶ国語の字幕などを投影する調整

 ●保存と保全/昭和25年の再建から変わらない能舞台全体と2階の茶室ほか、価値あるゾーンを「保存」し、客席ゾーンと裏手の楽屋・倉庫ゾーンを「保全」(実態に応じて修復・改善)することを重要視。また玄関やトイレも充実させる。

左:2階席奥の茶室  右:トイレ周りの工事(2012年10月)

左:2階席奥の茶室 右:トイレ周りの工事(2012年10月)

●耐震工事のねらい/室内にいる演者と観客の安全を守りながら、不安なく日常活動を維持する=山本能楽堂にとって公共的・地域的責任を果たすための取り組みとなる。これからの時代に文化の機能を継承するためには今、何を、どのように手を入れるべきかを熟慮する。

これらを念頭におき、ここまで2ヵ年度、大どころとして実施した建築の構造、玄関周り、空調、客席部分の具体的な改修内容を説明しました。

■木造建築の特徴「しなりながら粘る」という柔らかさをうまく活かし、要所を「耐震リング」で固めた。

■壁面の弱い部分は荒壁パネルで補強しつつ、舞台周辺の壁を漆喰に戻すなどし、できるだけ再建当初の姿、白木の佇まいに戻した。

左:耐震リングで木造の軸組みを強化 右:プレス発表の際壁にプロジェクター投影(2012年11月)

左:耐震リングで木造の軸組みを強化 右:プレス発表の際壁にプロジェクター投影(2012年11月)

■客席に椅子席を設けたり、温水床暖房を設置するなど、時代に即した快適な鑑賞環境を提供。

■LED光源による照明演出で、さまざまなシーン設定を可能に。こうした照明デザインはLEM空間工房(長町志穂さん)が担当。そのほかデザイン監修にgraf(服部滋樹さん)が、施工に金剛組、監修に田尻工務店が担当し、それぞれプロフェッショナルの知恵と経験が結集されている。

LED照明で多彩なシーンを演出

LED照明で多彩な色・シーンを演出

 以上から引き続き、これから最終年度の工事として、楽屋・稽古場周りを中心に改修を進めることをお伝えしました。地域コミュニティ、上方伝統芸能の発信基地としてのライブラリー・資料室の創設も予定されています。

結びに佐野から、「当社89年の歴史の中で、いろいろな建築を設計してまいりました。このような歴史的価値と文化の活力とを兼ね備えた建築を、さらに次の時代に引き継ぐ仕事に従事できたことを誇りに感じます」とご挨拶しました。

関係者の皆様とこれまで協力し築いたチームワークを活かしながら、改修事業の最終年度に努めてまいります。引き続き、よろしくお願いいたします。

 

なお、続く当日のプログラムで、山本能楽堂代表理事・山本章弘さんから能のレクチャー『Do you know 能?』と舞台裏を含む能楽堂の見学ツアーが用意されていました。

能面(女性)では髪の乱れ具合で年齢を表現/舞台下に12個の瓶(かめ)があり音響効果を高めている

左:能面(女性)では髪の乱れ具合で年齢を表現 右:舞台下に12個の瓶(かめ)があり音響効果を高めている

詳細は割愛しますが、ユーモアあふれた山本さんの解説トークで、「能素人」の広報部員含め、参加者に笑いと興味を抱かせる楽しいひと時でした。ためになるレクチャーありがとうございました。

山本能楽堂では日頃から「見学会・体験講座」も用意されているようですので、ご興味ある方、ぜひ足をはこんでみてはいかがでしょうか。

 

(安井建築設計事務所 広報部)

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