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フィルムセンター相模原映画保存棟Ⅲに重要文化財フィルムを保管

当社が設計・監理を担当し、2011年3月に竣工した「東京国立近代美術館フィルムセンター相模原分館 映画保存棟Ⅱ」については、当社の広報リーフレット『対話力は設計力』の第10号で、施設の内容(映画フィルム保管の意義)、設計の意図を発信しています。

映画保存棟Ⅱに続き、当社が設計・監理に関わった「映画保存棟Ⅲ(重要文化財映画フィルム保管庫)」も昨年2014年3月に竣工していましたが、約1年の安定期間をおき、この2015年1月に正式に活用がスタートしています。

2014年3月に竣工した映画保存棟Ⅲの外観

2014年3月に竣工した映画保存棟Ⅲの外観

写真左:2011年3月竣工の映画保存棟Ⅱ 写真左手奥が映画保存棟Ⅲ/写真右:モノクロ映画フィルムのイメージから、外観は右の映画保存棟Ⅰ(1986年完成)の白に対し、左の映画保存棟Ⅱは黒で対比させた

写真左:2011年3月竣工の映画保存棟Ⅱ 写真左手奥が映画保存棟Ⅲ/写真右:モノクロ映画フィルムのイメージから、外観は右の映画保存棟Ⅰ(1986年完成)の白に対し、左の映画保存棟Ⅱは黒で対比させた

映画保存棟Ⅲは、重要文化財に指定された映画フィルム等を安全に保護し、劣化の進行を抑えながら長期に亘って保管することを目的に計画・建設されたものですが、この1月に以下4巻の映画フィルムが保管されました。

(1)2009年に初めての国の重要文化財に指定された『紅葉狩』(柴田常吉撮影・1899年)35mmデュープネガ1巻

(2)2010年に重要文化財に指定された『史劇 楠公訣別』(日活製作・1921年)35mmオリジナルネガ1巻

(3)2011年に重要文化財に指定された『小林富次郎葬儀』(吉澤商店撮影・1910年)35mmオリジナルネガ1巻

(4)上記に同じ『小林富次郎葬儀』の35mm上映用ポジ1巻

これらはいずれも1950年代以前に主流だったニトロセルロースをベースに用いた「ナイトレート・フィルム」と呼ばれる可燃性のフィルムで、劣化状態と気温によっては自然発火する可能性もあるものです。消防法第5類1種危険物に指定されており、通常10kg以下で所轄消防署の許可を受ければ少量危険物として保管できるところですが、それを超えると平屋の建屋において許可を受けた者が取り扱う、もしくは立会という条件が課せられます。

映画保存棟Ⅲがその役割を担うことになり、今回は4巻だけの保管となりましたが、今後さらに重要文化財に指定されるフィルムが増えていくことを想定(希望)し、安全に保管される施設が整えられたことは、フィルムセンターにとっても火急課題の解決になったといえます。

外装デザインは映画保存棟Ⅱの「黒」をベースに、保存棟Ⅰの「白」を使って、映写される光を想起されるものとした)

外装デザインは映画保存棟Ⅱの「黒」をベースに、保存棟Ⅰの「白」を使って、映写される光を想起されるものとした

3室ある保存庫のうち2室の内部/ここにも黒、白の使い分け

3室ある保存庫のうち2室の内部/ここにも黒、白の使い分け

建屋は3室に別れ、各室ともフィルム保存庫に入る手前に、緩衝帯となる前室と結露防止のための「ならし室」を設けています。

個々の保存庫棚の内部/左:上部の水による消火設備、右:下部の排水(集水)口

個々の保存庫棚の内部/左:上部の水による消火設備、右:下部の排水(集水)口

保存庫には前後に2缶ずつ格納できる16段の保存棚が12列あり、収納可能缶数は3室合計1,152缶となっています。保存庫内はどの室も分館施設内で最も低い温湿度となる2℃(±2℃)、相対湿度35%(±5%)を恒常的に保ち、空気中の遊離酸を除去する化学吸着フィルターを装備しています。消火は保存棚の列ごとに水で行い、他の棚や保存庫全体への延焼、影響を防ぐとともに、消火で使った水は排水せずに循環利用できるシステムになっています。

建物躯体自体の防水性、耐火性(鉄筋コンクリート造)を高め、建物背後の敷地北東部には延焼防止の擁壁(写真上・左)を設置しています。

フィルムセンターでは、現在約6,000缶にのぼるナイトレート・フィルムを大阪府高石市の民間倉庫に保管しており、これから順次全数検査を進め現状把握していきます。そこから今後の重要文化財指定を想定しながら、映画保存棟Ⅲへの格納が求められるフィルムを選別、移動させていくとのことです。

映画保存棟Ⅱの映画フィルム検査室では、日々大量の受け入れフィルムの検査、データ採取、補修作業などが行われている

映画保存棟Ⅱの映画フィルム検査室では、日々大量の受け入れフィルムの検査、データ採取、補修作業などが行われている

ニトロセルロース・ベースの映画フィルムは、120年に及ぶ映画史の前半期を支えた貴重なキャリアで、映画保存棟Ⅲはこの可燃性フィルムを専用に長期保管する目的で建てられた、日本で初めての公共施設です。

この施設の適切な利用を通して、将来に亘り文化財としての映画フィルムを保存することを使命とするフィルムセンター。その「映画フィルム愛」への一助に、当社も関われたことを誇りに感じています。

 

(安井建築設計事務所 設計担当・広報部)

 

※本文協力、引用出典=独立行政法人国立美術館 東京国立近代美術館フィルムセンター、同機関誌『NFCニューズレター』117号(2014年10-11月号)

※写真撮影=安井建築設計事務所 広報部(2015年2月初旬)

 

【TOPICS】

(1)出版メディア/都市出版株式会社発行の『東京人』2015年3月号:特集「記録フィルムの東京」に、東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員・とちぎあきら氏の寄稿が掲載されています。上記本文で紹介した重要文化財指定のフィルム、『紅葉狩』、『史劇 楠公訣別』、『小林富次郎葬儀』に関する解説ほか、記録フィルムを通してわかる戦前・戦後、震災とその復興の記録と意義など、示唆に富んだ内容です。どうぞ手にとってご覧ください。

 

(2)テレビ番組/BS朝日『建物遺産』(毎週金曜 22:54~23:00放送)の<特別編>で、来る3月20日(金)に「東京国立近代美術館フィルムセンター相模原分館 映画保存棟」が紹介されます。映画保存棟Ⅱをメインにした内容ですが、フィルム保存の意義を含めた建築の役割が伝えられる予定です。どうぞご覧ください。

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