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熊本近代文学館が「くまもと文学・歴史館」に生まれ変わりました

熊本県立図書館(温知館)が、総合的な改修事業の一環として2014年7月から進めてきた熊本近代文学館の改修工事を終え、1月28日(木)くまもと文学・歴史館」としてリニューアル・オープンしました。

熊本県立図書館外観

熊本県立図書館外観

1985年竣工の熊本県立図書館(温知館)は、当社の設計で竣工当時「BCS賞」を受賞、長年の維持管理・運営の良さも評価され、2013年度の「JIA25年賞」も受賞し、長く県民に愛され利用されています。

左:旧砂取細川邸庭園越しの図書館(左下は展示室3)/右:「文学・歴史館」エントランス(1月28日オープニング)

左:旧砂取細川邸庭園越しの図書館(左下は展示室3)/右:「文学・歴史館」エントランス(1月28日オープニング)

熊本近代文学館は同図書館に併設されている施設ですが、施設や設備の老朽化に伴い当社が改修設計を担当、図書館に続いて改修工事が進められていました。

空調、照明などに配慮、設備更新を図り、国指定文化財の展示も可能な環境を備えながら、限られた展示面積を柔軟に活用することで成長する歴史館を具現化しました。外観はそのままで施設の配置や展示、内装を一新したほか、エントランスからロビーにかけて県産材を多用した、温かみのある施設になっています。
28日(木)のオープンに先立ち、26日(火)に報道向け内覧会が実施されました。その写真を交え、施設の特徴をお伝えします。

ロビーにて館長のご挨拶と概要説明、地元のメディアも注目の報道

ロビーにて館長のご挨拶と概要説明、地元のメディアも注目の報道

新しい施設では、小泉八雲や夏目漱石など、熊本ゆかりの文学者の原稿や遺品など、これまで収集した文学資料に加え、江戸時代熊本藩の「検地帳」や絵図、人吉藩主相良氏の古文書、明治時代の県関係公文書など熊本に伝わる貴重な“本物”の歴史資料が展示されます。熊本が育んだ文学と歴史にまつわる史資料を通して「くまもとの記憶」に触れ、興味がわけばすぐ図書館で調べることができまる「知の拠点」となっています。

はじめに施設館長からご挨拶いただき、せっかくの所蔵物を外に向けて公開・発信したいという願いが実現でき、今回の改修でデジタル資料の提供も可能になったことが大きい。また、リニューアルとあわせ、学芸調査員スタッフが増えたことも今後のアーカイブ整理と柔軟な更新対応のため、たいへん喜ばしい気持ちであることを語られました。建築も含めたハード面だけでなく、人の関わり・人材育成も施設の存在意義を継続する大切な要素であることが認識できました。展示室は3カ所配置され、展示面積は延べ約700㎡です。

ロビーのプロローグ展示(写真提供:日刊建設通信新聞社)、壁面は県産木材のストライプ模様

ロビーのプロローグ展示(写真提供:日刊建設通信新聞社)、壁面は県産木材のストライプ模様

まず「エントランス/ロビー」はプロローグ展示として、館のコンセプト「文学と歴史でたどるくまもとの記憶」を映像などで紹介しています。内装に県産材を積極利用し、天井はルーバー、壁面もランダムなストライプ模様をつくっています。

実はこの壁面のストライプデザインは、1985090201601という13桁をバーコードにしてデザイン化したものです。「198509」は図書館(文学館)の新築時の竣工年月で、「0」はリスタート、「201601」は「文学・歴史館」として再出発した今回の年月を表しています。設計担当者の「遊び心」ですが、意味を込めたデザインです。

「展示室1」は明るさを抑えた照明で貴重な資料を展示しています。入って右から「1-文字に記されたくまもとの記憶」、正面に「2-絵図に残されたくまもとの記憶」、左に「3-人物に彩られたくまもとの記憶」という3部構成の流れで展示。夏目漱石が熊本在住時代に作成した俳句を正岡子規が添削した書簡や江戸時代の「肥後国検地諸帳(ひごのくにけんちしょちょう:県指定重要文化財)」など、初公開の貴重な資料も展示されています。

左:「二ノ丸之絵図」/右:さまざまな絵図は、建築的見取り図としても興味深い

左:「二ノ丸之絵図」/右:さまざまな絵図は、建築的見取り図としても興味深い

「二ノ丸之絵図」は江戸時代、“学校”時習館があった頃の熊本城内、家臣の屋敷割が用途別に色わけされた地図。さながら現代の「都市計画地図」みたいで、建築・都市計画の視点でたいへん興味深いものです。

「展示室2」は明るい展示空間で、近世から現代まで熊本の文学の流れを歴史背景とともにパネル・収蔵資料で紹介しています。「収蔵資料デジタルコレクション」のコーナーには大型タッチパネルの端末が設置され、検索・閲覧ができ、興味を持てば隣接の図書館で詳細な調査もできます。

展示室2の収蔵資料デジタルコレクションコーナー、大型タッチパネル端末

展示室2の収蔵資料デジタルコレクションコーナー、大型タッチパネル端末


「展示室3」は旧砂取細川邸庭園を望む明るく楽しい展示室です。ワークショップなどに利用するなど「交流活動室」としての機能があり、「交流=人や自然(庭園)との交流」という意味あいもあります。熊本県近代文化功労者顕彰のパネル、周辺や市内散策マップ、映像コレクションも常設されています。

右:この地にあった砂取御邸絵図と現在の図書館を重ねた解説図

右:この地にあった砂取御邸絵図と現在の図書館を重ねた解説図

ここでも設計担当者の「遊び心」ですが、床カーペットの模様・・・色は畳(いぐさ)のイメージで地域性を表し、白い線は昔ここにあった「砂取細川御邸」の間取り図の一部分を再現しています。

図書館との連絡廊下には壁面を使って「図書館ギャラリー」を設けています。熊本ゆかりの文学者の紹介パネル約30枚を展示し、図書館との連携が意識されます。

地元熊本の方はあらためて、また、旅行などで熊本を訪れる際にはぜひ足を運んでみてください。熊本観光の興味・知識が少しでも深まることに違いありません。

全国にも数多くある単独の「文学館」は来場・利用者数など伸び悩み、運営面で厳しい側面があることも耳にしますが、今回の「文学・歴史館」は建築のプログラムとして図書館との併設。その強み「連携して知識をより深く」が実現、向上できる良きモデルケースとなることを願っています。

 

一連の改修計画、完成に至るまでたいへんお世話になった関係者のみなさまに心より御礼申し上げます。

 

(安井建築設計事務所 設計担当・広報部)

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