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『直感で理解する!構造設計の基本』出版記念講演会レポート

当コーナーで7月26日にお知らせしました、当社大阪事務所構造部長・山浦晋弘の書籍『直感で理解する!構造設計の基本』の出版を記念した講演会が、8月5日(金)、TOTOテクニカルセンター大阪で開催されました。

一社・日本建築協会主催(同出版委員会の企画)の第38回<プロのノウハウ>講座として、設計実務者から学生まで、定員50名が満席となる会場で山浦から同書のポイントを解説しました。

「手計算世代から次の世代に送るエール~信頼され、愛される構造設計者になるために」と題して冒頭、「建築は文字や数字ではなく、手、体の記憶で受け継ぐこと」の重要性を語り、若い設計者や新入社員に向け、若いうちは「手計算をしなさい」「定規を使うな」という“泥臭い”取り組みへの勧めを強調しました。また、設計、計算とは一見関係なさそうな「文章力、こくごの効用」についても、自分の考えていることを正確に伝え、コンセプトを論理的に組み立てる能力として重要であるとし、建築の実現に欠かせないクライアントを説得し理解を得る手段として、「わかりやすい文章を書く」心得も伝えました。

本題では、自分なりの思想をもつ構造設計、耐震性能と被害イメージ、大地震の教訓を生かす耐震設計の方向性など、構造設計者として専門的な内容でありながら基本的な取り組み姿勢を語っていきました。そこでは「計算と設計の隙間を埋める」、「設計と施工の隙間を埋める」といった観点で、山浦本人が長年培った実務経験、後進指導の中から、敷地条件や現場で見落としがちなポイントなどレクチャーしました。

とくに意匠設計者との建物「イメージの共有」は最初にしっかりと行うことが重要で、ここでも手書きスケッチや参考写真などを提示・共有して相互の理解を深め、そこから良い設計・建物が生まれることを力説しています。
また、「直感」をイメージできる「綱引きのはなし」が興味深く、綱引きで勝つ条件を構造力学的に解いてみました。
“重い・まっすぐ・すべらない”を勝つ3条件として、あの身体を傾け地面にふんばる姿勢は、身体が自然と身につけたもの。身体が力のバランスを感じていることに思いをめぐらせ、本題のテーマ「建築、設計は身体で覚える」も、まさにこの感覚とつながるのかもしれません。

結びで「信頼され、愛される構造設計者になるために~信頼を勝ち取るためコツ」として、まず関係者とのコミュニケーションの重要性を説きました。簡単に「できない」と言わず、「こういうふうならできる」「こういう条件ならできる」というように、議論が発展できる会話を心がけるようにと。また「時間をデザインする」こと、すなわち相手を待たさないよう、先に相手に情報提供(作業依頼)し、その間に自分の仕事を行うようにする。こうしたビジネスでの基本を実行することも信頼への一歩として再認識を促しています。

最後もやはり「計算ソフトに頼らず手計算をしておく」、「スケール感覚を養うためには定規は使わない」の大切さに触れ、「頭で覚えたことはすぐ忘れるが身体で覚えたことは忘れない」のメッセージと、特に若い人には何ごとにも好奇心を持って自分を成長させるようにとエールを送りました。
コンピュータの発達で構造計算も便利でますますスピーディになる・・・こうした時代だからこそ危惧する、技術者への「警鐘」と技術の「継承」が本書に込められています。ぜひ本書を手にとり、「感じとって」いただければ幸いです。

 

(安井建築設計事務所 広報部)

『直感で理解する!構造設計の基本』(企画:一般社団法人日本建築協会、発行:学芸出版社)

カテゴリー: 技術発信/教育・育み/TODAY

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