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佐倉市立美術館に安井武雄資料を出展します

来る11月3日(土・祝)より、千葉県の佐倉市立美術館で開催される展覧会『知られざるドイツ建築の継承者―矢部又吉と佐倉の近代建築』で、佐倉が生まれ故郷である当社の創業者・安井武雄(1884-1955)の建築資料が展示されます。
この展覧会は、佐倉市立美術館のエントラスホールとして利用されている旧川崎銀行佐倉支店[1918年]の耐震改修工事が終了したのを記念して、その設計者である矢部又吉(1888-1941)の生誕130年の節目に、佐倉に残る近代建築や佐倉ゆかりの建築家を、設計図、模型等の資料で紹介するものです。
矢部又吉のほか、久野節(佐倉高等学校記念館)、伊東忠太(佐倉で幼少期を過ごす)などを対象に、安井武雄は昨年末に大阪府立中之島図書館で開催した『建築家・安井武雄の創造力~近代大阪の精華』展では対象外とした東京の現存代表作「日本橋野村ビル旧館」の手描きスケッチ原画などを展示します。
大阪の「高麗橋野村ビル」の資料も出展し、そのデザインの変遷や、東京大学より卒業設計『住宅』の原図[1910年]も出陳され、あわせて安井武雄の足跡の一端を感じていただける選定になっています。
これらは昨年の安井武雄展にも展示したもので、前機会を逃した方にはあらためてご覧いただきたい資料です。どうぞ、佐倉に足をお運びください。

◆展覧会/『知られざるドイツ建築の継承者―矢部又吉と佐倉の近代建築』
◆会期/2018年11月3日(土・祝)~12月24日(月・祝)
◆開館時間/10時~18時(月曜休館、ただし12月24日は開館)
◆会場/佐倉市立美術館(千葉県佐倉市新町210)
◆観覧料/一般600(480) 円、大・高生400(320) 円、中学生以下無料
※( )内は前売り及び20名以上の団体

 

出展する2つの「野村ビル」について、その解説を下記にご紹介します。
いずれも昨年の安井武雄展で監修を務めていただいた石田潤一郎教授(京都工芸繊維大学名誉教授/武庫川女子大学客員教授 工学博士)によるものです。今回の出展資料、大阪・東京に現存する建物の「見どころ」としてご一読ください。

 

高麗橋野村ビル [1927年]

高麗橋野村ビル(2017年10月 撮影:淺川 敏 以下2点同)

安井武雄は、大阪野村銀行堂島支店[1922年]と同本店[1924年]の設計で野村徳七の知遇を得る。徳七はこの時期、野村證券をはじめ、銀行、保険、貿易など一大企業グループを形成しつつあった。1924(大正13)年に独立する安井武雄にとって最良の理解者であり、最大のクライアントとなる。徳七はビル経営にも積極的であった。堺筋沿いに、北浜野村ビル[1921年、竹中工務店の設計施工]、備後町の上記本店ビル、そして1927(昭和2)年に当建築を建設する。高麗橋野村ビルは敷地に奥行が乏しく、また全室貸室ということもあって立面の構成は単純である。しかし細部は複雑な企みに満ちている。腰壁は前面に傾斜し、各階窓下には瓦の帯が走る。壁面の1階は凝灰岩とタイル、2階以上はモルタルの掻き落としと、土を連想させる材料で仕上げられる。近代性と原始性をあわせもつ秀作。なお、7階部分は戦後の増築。 (文:石田潤一郎)

 

日本橋野村ビル [旧館:1930年]

日本橋野村ビル(2018年8月 撮影:淺川 敏 以下2点同)

野村徳七が東京へ進出する拠点として、日本橋のたもとに建設された。四日市河岸と呼ばれた由緒ある土地である。当初、野村グループが用いたのは2階までで、3階以上は貸しオフィスとされた。
奥行きの浅い形状や、壁面に瓦状のテラコッタを水平にめぐらす手法(後年、改修され、現在は見られない)は高麗橋野村ビル[1927年]と共通する。しかし、高麗橋野村ビルの特徴となっている装飾や曲線は排除され、直線による幾何学的な立面構成を追求している。1階は石張りで、高潮に備えた基壇を構え、その上に列柱状に柱形を強調することで重厚にまとめる。2階から6階までは茶褐色のタイル貼りとするが、6階部分でわずかに壁面をセットバックさせ、さらに7階部分は白モルタル塗りとして宝形屋根を載せるなど、細かな操作を積み重ねる。窓の形状の多彩さも注目される。
戦後、野村證券の本社を大阪から当ビルに移すにあたって、東側に延長する形で増築が図られる。1954(昭和29)年、安井武雄はその基本設計をまとめる。それは安井にとって実質的に最後の作品となった。後を継いだ佐野正一がこれに補訂を加えて、1959(昭和34)年に新館が完成する。現代的な感覚を加えつつ、旧館と調和した巧みな増築である。 (文:石田潤一郎)
※佐野正一(1921-2014)/安井建築設計事務所 代表取締役社長1961-1988

 

■日本橋野村ビル旧館は2018年4月1日付けで、東京都「中央区民文化財」に登録され、特に重要なものとして「中央区指定文化財」の指定も受けています。

 

(安井建築設計事務所 広報部)

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