三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー3
――自然の一部である身体を取り戻すために
荒川修作とマドリン・ギンズが、建築のなかでも住宅を志向する契機となったのが、1995年に手がけた「養老天命反転地」です。
現在も年間入場者数10万人を越えるこの場所は、当初、けが人が出たこともあり、芸術家に対する世間の目は厳しかったと、ARAKAWA+GINS Tokyo Officeの本間桃世さんはいいます。
「危ない芸術家の目論見だろうと、孤立無援のときに応援してくださったのが、安井建築設計事務所の佐野社長でした。紹介していただいたゼネコンさんの担当の方には『社内を説得するのが大変だった』といわれたように、その特殊性を考えると、住宅の完成は奇跡に近いことだと思います」
天命=受け入れるもの。多くの人が抱くそんなイメージを反転させる――改めて考えれば、天命反転とは、とても強いことばです。そこには自然の一部である身体を取り戻そうという、芸術家の挑戦が込められているのでしょう。
<三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー シリーズ>
1 天命の反転を終えて
2 身体を中心につくられた家