現代美術家、荒川修作氏の哲学である「私たちが死なない方向に進むための用具としての住居」を具現化、実際に住まう住宅として実践した三鷹市におけるプロジェクトである。 荒川氏が投げかける、本当の豊かさを享受できる住まいとまちづくりの課題は日本に限られたものではない。「天命反転住宅」は単なるエコロジーの観念に留まることなく、建築がそこに住む人々に及ぼす身体的・精神的影響に着目し、「次世代へ継承していく持続的なライフスタイル」を構築し、世界に問いかけるものである。 敷地内にA棟、B棟、C棟が独立した建物で、それを鉄骨階段の外廊下でつないでいる。各棟はスタディルームと名づけられた直径約3mの球体と、バスルーム・トイレ用途の直径約3mで長さ約3mの円筒体、畳部屋とベッドルーム用途の約3m角の立方体を各々共通の住戸ユニットとし、それらを直径約7mの円形平面の4隅に配置し、それを1住戸としている。住居ユニットをつなぐ円形平面の中心がキッチンで、それ取り囲む床は約1/20の勾配で傾斜しながら起伏のある三和土(タタキ)となっている。1住戸を3層とし、各住戸ユニットが1層ごとに1/4回転ずつずれながら上下連結され、1棟3層3住戸、3棟で計9戸の住戸とする。各住戸ユニットは壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造(WPC)となっており、各住戸ユニットを鉛直方向に3段に重ね、それ自身を大きな柱材として全体の荷重を支えている。A棟C棟は4隅の住戸ユニットで、B棟は3箇所の住戸ユニットと偏心と剛性を調整する壁柱で各々構成されている。
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