©2005 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins.
三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー2
――人間は、刺激のない均質な空間では五感を働かせようとしなくなる。
荒川修作は生前、そんなことばを残しています。人間が本来持っている感覚を呼び起こすために「身体を中心につくられた家」とは、いったいどんな家なのでしょう。
お椀を伏せたような緩やかな凹凸が、土踏まずに心地よい床面。そこだけ音の響きが一転する、球体の室内。リビングに設置された梯子や登り棒……。
これは何? なぜ? 訪れた人に問いを投げかける「三鷹天命反転住宅」は、その複雑さや不均衡によって、そこにいる者の五感を刺激します。床も天井も勾配の異なる空間は、立つ位置によって互いの目線が変わるように、人と人との関係性にも影響を及ぼします。
人間が無意識裡に持つ思い込みや、常識、社会通念をゆさぶる住宅は、私たちがそれぞれの身体に合わせてこの建物と向き合うことを求めているのです。
<三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー シリーズ>
1 天命の反転を終えて