建築なんでも相談

建築から学ぶこと

2026/03/11

No. 1007

フラジャイルなものに注ぐ眼差し

津田塾大学が、新たなウェルネス館を開設した。それは小平のメインキャンパスの木陰に寄り添って、木造の優しい表情で姿を現している。従来から同学は学生への健康サポートやカウンセリングなどを受け持つウェルネスセンターを設けていたが、独立した棟を訪ねると、その機能を強化する役割だけでなく、この視点を学問の新しい切り口にする思いがこもっているのではと感じる。それは声が届きにくい、見過ごしてしまいかねない細部にこそ、本質が潜んでいるとの予感と確信ではないだろうか。声高なアジテーションや暴力が世界に嫌な空気をつくりだしかねない現在、こうした大切な細部に目を留めることは重要である。
この時期、冬季オリンピックがいったん閉じた後、パラリンピックが楽しく、しかし熱い勝負を繰り広げている。それはまさに補助具を伴う「アダプタブル・スポーツ」の大会であり、障がいがあっても、装備を少しばかり創意工夫することによって同等に競い合えるものだ。誰もが同等にスポーツを楽しめることは基本だから、パラリンピックは向こう岸にある大会ではない。同じ会場を連続して使うかたちが定着していることで、我々はそのような大切なことに気づくことができる。
ところで、今年は英国の大作曲家ベンジャミン・ブリテン(1913-76)の没後50年にあたる。多くの重要な作品を残した人がイメージほどに長寿ではなかったのは意外である。過日、ようやく実演(*)で聴くことができた中期の大作「春の交響曲」(1949)は、端正な響きとともに、春の喜びの隣り合わせにある悲劇への想像力など、優しい眼差しがあふれるものだった(「ピーター・グライムス」(1945)も社会問題に触れながら美しい音楽を紡ぐ)。世界には良い先例もあり、同時代の良い取組みもあるのだ。

(*)3月4日、大野和士指揮東京都交響楽団@東京文化会館

佐野吉彦

春を待つ森、小平にて

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