本敷地は、東京・永田町の都心に位置しながらも、日枝神社の緑、外堀通りや公開空地に面した豊かな環境である。この周辺環境を最大限に取り込みながら、旧本社で課題であった、分断された執務スペース・段差を解消し、本社としての耐震性およびBCPを確保することが求められた。 ファサードは隣地の西側を除く三面を熱的性能の高い特殊なガラスとし、開放性と外乱負荷の抑制を両立させた。2、3階部分は、外壁をセットバックし、周囲の緑を連続させ都市の空隙を取り込む外部空間とした。4階以上の事務所フロアは床面積を最大化しつつ、コアを西側コンパクトに納めることで、広く一体的な執務空間を確保した。そこにオープンな階段と吹き抜けを隣接させ、各階をつなぎ、社員の視線と空気感が伝わる「風通しの良い」オフィスとしている。内勤者の快適性を重視し気流感の少ない床輻射空調を採用したほか、階段室を利用した自然換気、高性能ガラス及びタスクアンビエント照明等の採用により、BEI値0.5・BELS☆5を取得し、環境負荷を抑えた次世代の省エネビルを実現している。 屋上には建物自重の4%にあたる100トンの地震用TMD(同調質量ダンパー)を設置し、地震後の後揺れの時間を半減させている。各階にダンパー等を分散配置するのではなく、屋上に集約配置することで、執務空間のフレキシビリティを確保しながら耐震性能を高める「中規模鉄骨造用のコンパクト制振」として機能している。オフィスの大部分は、トラス鉄筋付きデッキと小梁を無くす大梁横補剛省略構法により、天井レスのオフィス空間として地震時の天井・機器の脱落に配慮したほか、役員フロアや大会議室等を中心に3日間業務継続できる計画としている。 オフィスのペリメーターゾーンに商材のフローリングを用いるなど、建物の要所に商材を用いたこと、また「らしい」働き方について議論を重ねたことで、エービーシー商会ならではのオフィス空間が実現している。