稲山凌生
設計部
理工学研究科建築学専攻
研究室の教授に触発されて、建築の道へ
建築・設計という分野を志望した動機を教えてください
実家は車の部品をつくる仕事をしていて、加工機を動かす父親の姿を幼い頃から目にするなど、ものづくりが身近な環境で育ちました。親の希望もあり、医師を目指していた時期もありましたが、自宅を建て替える際、打ち合わせに来ていた建築士さんを通じて建築の仕事を肌で感じ、大学では建築学科に進みました。 建築の道に進む上で、もっとも影響を受けたのは大学の研究室の教授です。「よい建築をつくるにはデザインだけでなく、あらゆる物事を包括的に把握する必要があるから、とにかく自分の好きなことを建築と結びつけてみなさい」といわれ、AIに興味を持っていた僕は、建築業界における生産性を改善するため、AIをどう活かせるかをテーマに修論を書きました。教授のいう通り、建築は自分の興味や関心とつながる幅の広い分野だと実感したことで、建築への興味が深まりました。
入社のきっかけは?
いろいろな人とチームで仕事をしたかったので、組織設計事務所かゼネコンへの就職を考えていましたが、修論のテーマにAIを選んだ自分の興味とマッチすると思ったのが、デジタルツールに力を入れている安井でした。 印象に残っているのが就職選考時の面接です。他社では緊張して、面接終了後、あの話をすればよかった、いい忘れたと思うことがありましたが、安井ではそういうことが一切なく、とても朗らかに会話ができました。こうした面接の経験から、雰囲気のよい会社だと感じ、入社を決めました。
課題をひとつずつ克服した、大阪・関西万博
入社当初はどんな仕事をしていましたか
沖縄のリゾートホテルで外構の現場に入り、シーサー選びを担当しました。「歴史あるホテルにふさわしいシーサーを」といわれたものの、どこに発注すればよいかわからず、沖縄の工房に片っ端から電話を入れて2ヵ月ほどかけてシーサーを探したほか、外構にどんな石を使うかなど、必死で選びました。ものづくりをするには、まずものを知らなければいけないと、最初に現場で学んだ経験は、その後の仕事にも活きています。
最近の仕事について教えてください
大阪・関西万博で、公式参加者がイベントをおこなうメイン会場『レイガーデン』をデザインしたアトリエ事務所と協働して、楽屋などバックヤードの設計や、諸々の申請手続きなどを担当しました。万博は基本設計3カ月、実施設計半年、現場が1年余りと、本当に短期決戦です。仮設建築は法規の扱いが特殊で、あの奇抜なデザインの建築を成立させるために、各段階でスペックを逐一確認し、行政に申請して許可をもらうことを繰り返して、建築基準要件を満たします。 途中、本当にできるのかと思うこともあったので、完成したときはどんな無理難題も、課題をひとつひとつ潰しながら組み立てていけば、建築は実現するということを実感できた、学びの多いプロジェクトでした。
エンドユーザーとして利用できる建築を
今後、どんな仕事をしてみたいですか?
自分がエンドユーザーとして利用できる建築に関わると、使い手の姿が実感値として想像できるのでモチベーションが上がります。ホテル、役場、大学、駅ビル、劇場など、いろいろな用途の物件を担当してきましたが、どんな用途の物件であれ、各プロジェクトのポイントは何かを把握し、そこに自分の力を最大限注ぎたいと思っています。 また、働き方改革が求められる時代なので、設計者が0から1を生み出すことに費やす時間を増やすために、機械ができる仕事は機械に任せるなど、デジタルツールの活用によって設計プロセスの合理化も進めたいです。
移転後の事務所はどんな雰囲気ですか?
オフィスにはコミュニケーションを取るために来ているので、フリーアドレスが導入され、毎日席を変えていろいろな人とやりとりできる働き方は、自分にとても合っています。
入社希望者へのメッセージを
自分が意識を向ければ、生活の延長線上に設計につながるあらゆる情報がある――建築はそういう仕事です。日々の生活に対して広く好奇心を持ち、興味を持ったことを深く調べて価値に転換できる人とディスカッションしながら、一緒にものづくりができればと思います。
2025.8