建築から学ぶこと

2012/10/24

No. 347

きっかけとなるか、その展示

この10月にふたつの歴史展示コーナーを完成させる機会があった。ひとつはカトリック夙川教会の聖堂地下にあるギャラリーで、耐震改修工事完成にあわせて展示ボードを整備した。聖堂80年の歩みを物語る写真パネル展示をおこなうという、シンプルなコンセプトと道具立てだが、信徒がその歩みに敬意を抱き、これから先への思いを共有するために効果をもたらすはずと考えている。もうひとつは安井建築設計事務所(大阪)のロビーに設けた江戸時代の古地図と絵図の展示ボードで、現代のビルの位置がそのなかで示される。この試みは、この地域の歴史をふまえながら、いかに現代の活動と重ねあわせるかを考えるきっかけとなるであろう。これらは常設であるので、ゆっくりと人目に触れてゆくことになる。建築デザインと整合させて整備するアイディア自体はかなり前からあたためていたのだが、実現するまでには時間をかけた(時間がかかった)のだが、訪問する人が自然に眼を向ける時期を待っていたと言える。

今年は、春に真鍋恒博教授の退任イヴェントに携わったが、ここではパーティの会場に展示コーナーを設営した(第320回参照)。最初に私が提案したのは氏の著書すべてを平積みで並べることであったが、その後運営チームの構想はふくらみ、39年の研究室活動の写真などを掲示するボード設置へと発展した。さらに面白いのは、参加者であるOBOGは自分が映っている写真を持ち帰ってよいという趣向で、何枚ものボードは大いに人だかりができた(じつは片づけゴミを大幅に減らす仕掛けでもあった)。パーティ会場で会話を誘い出す臨時ギャラリーのアイディアは、私が運営を担当する11月開催の某団体の90周年式典でも使うことにしたので、結果的に今年は歴史ギャラリー設営づくしの1年になった。それぞれはビジネスであったりなかったりするのだが、ほとんど人任せにはしなかったのは、歴史と現在をつなぐ仕掛けの効果に大いに興味を感じているからである

佐野吉彦

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