建築から学ぶこと

2024/06/19

No. 922

宇宙と地球、デュアルな開発

宇宙というキーワードが未来を構想する上で肝要になってきた。だが、このまま一気に宇宙を舞台に生活やビジネスが展開するということにはならないだろう。そこはまだ手探りの 領域であり時間がかかる。飛行技術も改良が進むだろうし、未開の地に根を下ろすためには、技術だけでなく法整備も含めて様々な側面から検証する必要がある。ますは、宇宙をテーマとしながら、地球を含めた広い世界のインフラの将来を考えることが先行すると思われる。

ところで向井千秋・東京理科大学特任副学長は、同学に設置した「スペース・コロニー研究センター」(現在「スペースシステム創造研究センター」に改称)では現在、宇宙での滞在技術の高度化と社会実装を追究している、と語っている*。たとえば、月に居住するとなると、いかに水や空気などの生存条件を安定的に確保するのか、故障などの非常時に自律的に対処できるのかという問題が現れる。月にはまちの便利な電気屋も水道屋も同行できない。そして、それらを克服し宇宙空間で快適な衣食住を持続させようとする技術とは、現在の地球上にある困難にも応用できるものである。地球には異常気候があり、コミュニティの成立が危機に瀕している。未知の局面を凌ぎきるには、宇宙という視点から切り込む「デュアル開発」が有効となるだろう。(ちなみに「デュアルユーステクノロジー」とは民生と軍用の両面で適用できる技術のことを指す)

それを進めるには、もちろん宇宙での検証・試行錯誤は欠かせない。となると、いかに取組みのための資金を捻出できるか、人材を投入できるかは重要である。現在の宇宙をめぐる論調は、建築家・構造家・思想家であるバックミンスター・フラー(1895-1983)が呼び覚ました想像力を受け継ぎながらも、より細やかで地に足の着いた取組みが期待されている。そうなると、ものづくりの知恵のある日本がリーダーシップを取り、材料の扱いに手慣れた建築技術者が積極的に関わる場面なのではないか。

 

*「朝日教育会議2020」2020.10.17

佐野吉彦

チャットGPTによるイメージ

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