建築から学ぶこと

2014/03/19

No. 417

国際的なコモンセンス

総じて、日本人は自分たちが海外でどのように見られているかに神経質になりがちだ。でも、不本意な評価を問題にするくらいなら、積極的かつ定常的な情報発信にもっと力を注いだほうが良いと思う(国内向けにおいても、人任せでないコミュニケーションは大事だ)。その努力が結果として相互理解・情報是正のはじまりとなるのだから。今年に入って世間を賑わせたできごとや発言のなかに、語った言葉が余りに内向きだったために対外的にうまく噛み合わなかった事例がいくつかあった。論点が何であろうと、長い目で見て「着実」であるべきだろう。もっともこの傾向は日本だけではないようだが、情報化社会ではもはや言論は狭いフィールドで完結しないことは弁えておきたい。

確かに異なるカルチュアとの交易は楽ではないが、そこで得る知恵も利益もおおきなものがある。国内だけの視野に留まるようでは、国としての体力も弱ってしまうのではないか。そのことで言えばサポーターが掲げた、差別的表現と解釈できる横断幕をめぐって、Jリーグが浦和レッズに下した処分(1試合を無観客試合とする処分)には切れ味があった。同志的関係にあるチームとサポーター両方にペナルティを与えたのである。サッカーが国際的な視点から事象を捉えていることを知らしめた処置だった。このケースは国際ルールに従ったのではなく、Jリーグ自ら率先して裁断した点が重要である。政府や教育機関が若い世代の国際進出をバックアップしようとするなら、自らモラルを体現して公正な行動をする気概について教え込む必要があるのではないか。建築家という職能では、なおさらであろう。建築家は地域から知恵を得るものだが、国境を越える公正さからも学ぶべきなのである。

佐野吉彦

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