建築から学ぶこと

2023/02/01

No. 854

再開発にあるモチベーション

再開発法が制定されたのは1969年、そこで市街地再開発事業が規定されて以来50年を過ぎ、この事業数は約1100地区と言われる。2000年前後に減少傾向があり、地方公共団体による施行は減少したが、民間施行は持ち直して一定数を維持できている。国土交通省による整理では、「都心部は、事務所・住宅が占める割合が非常に多いが、公益施設が占める割合が少なく、地方都市では公益施設・駐車場の占める割合が多い」とされており、これは実感できるものである。確かに、都心の好立地における住宅需要が、再開発の動きを促進しており、地方都市の駅前に公立図書館やバスターミナルを置くメニューは、コンパクトなまちづくりには効果的である。
さて、今年に入ってから我々が長年関わってきた2つの再開発が着工した。都心立地の方はまとまったボリュームの住宅供給を含み、郊外立地の方は、住宅・店舗・公益のバランスの上に成り立っている。少し前に竣工した再開発は、地方都市で戦後にできた共同ビルの建て替えという形(再々開発)を取り、異なったタイプを経験することができた。再開発を成立させる条件はいろいろあるが、まず、(市街地再開発組合の場合は)組合員の合意形成であり、そして将来の正しい展望である。未来を正確に描くことは難しいが、生活のスタイルに変化があっても対応可能な未来(創出したストックが活かされる未来)を計画できているかは重要である。
そうした視点でこれまでの各地の再開発事例を眺めてみると、大阪における阿倍野再開発、東京における大崎駅東口は駅前の表情を明るく変えたし、神戸の六甲道駅前は震災復興の好例となり、現在も進む赤坂六本木各ポイントでの取り組みは、東京の今後の鍵を握る役割を果たしている。ほかに創設されている制度と重ね合わせるケースもある。再開発は時間と手続きを要するが、その先にある未来を先取りする気運があれば、その背中を押す意義はあり、良い建築を実現させるモチベ―ションも生まれる。

佐野吉彦

これから整う湾岸景観

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