2023/03/01
No. 858
この2月に、AIA(米国建築家協会)は、2023年度のフェロー会員を選出した。そこでは米国籍でない建築家を特別に名誉フェローとし7-8名選出するのが慣例で、今年は3人の中国人の名前が発表されている。2022年度の2名(日本の岸和郎さんとフランスのLaurent J. Duport)と同様に少なく、しかも同じ国から3人というのは極めて珍しい。2021年度は選出がなく、2020年度は5名のうち2名が中国、1名が香港だったから、中国の存在感が大きくなっていると言える。もっとも昨年、MoMAが中国の8人の現役建築家を扱った展覧会を開催していて、そこに登場した建築家と重なっている(*)し、彼らの実績・実力への高い評価がある。
これを機に30年間の選出状況を振り返ってみると、最初の10年は日本から9名、次の10年で5名、最近は3名(私が2016年に選出)と漸減しており、カナダ・韓・英・仏も減少傾向にある。スペインやメキシコはある年に選ばれると、2年くらいは続いている。推薦がなければ審査も始まらないのだから、グローバルな場面での存在感発揮は大事なところだったのだろう。しかし、ロビー活動やAIAへの貢献などは選出の本質でもないと思われる。今年の3人の活動を見ても、作品やグローバルな行動を通じて、建築の価値を高め、活躍している人物であることが分かる。
一方で日本の漸減を通して考えてみたいのは、そうした視点で日本の今後の建築設計が、AIAの共感をも呼ぶ力、国境を越えるビジョンを持ち続けることができるかである。たぶんそれは建築に限らないことで、すべての分野で日本の積極性が問われていると言えるだろう。
*“Reuse, Renew, Recycle: Recent Architecture from China” には、プリツカー賞受賞のWang Shu、AIA 名誉フェロー選出者ではTiantain Xu(2020), Zhu Pei(2020), Philip F. Yuan(2023)の名前がある。