2013/05/08
No. 374
SPUR(サンフランシスコ都市計画・研究協会)が、昨秋から当地のSPUR Urban Center Galleryで、「Grand reduction:10 diagrams that changed city planning」を開催していた。ここでは、特に米国の都市計画に影響を与えた10の方法論が紹介されている。順に挙げると、①ハワードの田園都市・②コルビジェの未来都市(都市の高層化)・③フランク・ロイド・ライトのブロードエーカーシティ(田園との一体化)・④グリッドによる街区形成(19世紀初頭‐20世紀半ばまで有効)・⑤帯状に連なる都市群・⑥自然から都市への緩やかな遷移・⑦壁面後退による密集からの解放(とゾーニング論)・⑧中心性を持たないネットワークとしての都市・⑨人の認識から見た都市像の把握(ケヴィン・リンチの<都市のイメージ>が典型)・⑩気候温暖化から見た数値指標管理、ということになる。これらはおおよそ100年のあいだにトライアンドエラーを繰り返した視角だ。いずれの試みもまだまだ妥当性がある。それぞれに、展示のテーマにあるように、Reductionすなわち都市機能をコンパクトにしようとする精神が宿っているからだ。ただ実際には③は米中西部、⑤は米東海岸、⑥はボストンをモデルとしているので、結果的にどこまで汎用性があるかはわからない。それゆえに、都市計画に携わる政治家や官僚が、自らが対象とする都市にこうした方法論をそのまま当てはめようとすると、ぎごちない事態が生じるおそれがある(アジア諸国の郊外都市ではそうした事例にしばしば出あう:第371回参照)。
展示は、そうした批評的視点を読み取り、都市の規模や特性、成長ステージにあわせてクリエイティブに計画すべきことを教える。ところで、このSPURの事業にはGood Government Awardsと名付けられた、適切な都市政策実施や市民の政治参画の成果を顕彰する制度がある。すぐれた都市を計画するには、もちろん専門家の技量に負うところは大きいが、より幅広い参画が重要とのメッセージをSPURは発信しているのだ。