建築から学ぶこと

2015/11/18

No. 499

アジアが共有するもの

ARCASIA(アジア建築家評議会)は、アジア19カ国の、建築設計に関わる協会によって構成される組織である。1970年の第1回設立評議会を起点として、1979年に定款が調印されて活動が始まった。2年毎に開催されるアジア建築家会議(大会)、その間の年に行われるフォーラムを核にして相互理解を深め、社会的責任・教育・職能・環境・青年建築家といった委員会をエンジンとして、同じ職能を持つ同志が行動課題を共有することをねらいにしている。今年はフォーラムの年で、アユタヤ(タイ)でこの11月に開催された。

今回のエポックは「アルカシア社会的責任憲章(ARCASIA Charter on Social Responsibility)」の調印が実現したことである。ARCASIAの活動の目的に掲げられる<社会における建築家の役割に関する認識を促進すること、社会に奉仕する建築家および建築職能の啓発・教育を促進すること>について、ミッションが明瞭に示されることになった。憲章は<総則>に始まり、<説明責任・透明性・道義的行動・利害関係者にとっての利益の尊重・法の支配の遵守・行動を律する国際的規範の尊重・人権の尊重>といった順序で、いくぶん格調高めに述べられている。最後に<社会的責任に配慮した建築の事例>(災害からの復興、文化の継承によるコミュニティの再生など)が添えられているのは、具体的で分りやすい。

日本はアジアの中ではすぐれた建築的成果や技術情報の蓄積が多いと言えるだろう。一方で、これまで取り組みが遅れていた諸国も、資格制度や教育プログラムとの連携、継続教育の面で充実が進んでいる。このような、アジアが積み上げてきた知恵を共有することは、それぞれの国が、アジア圏でのビジネスを推進する上でも大きな支えとなる。興味深いのはARCASIAでの会議がすべて英語で行なわれることだ。これは英・露・仏・西の言語変換を常に意識しなければならないUIA(国際建築家連合)の会議体に比べると実は楽なのである。

 

※憲章の和訳については岩村和夫氏のものを参考にした。

佐野吉彦

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