2007/02/14
No. 70
ラグビーのマイクロソフトカップの決勝、東芝×サントリー(2月4日)は内容の濃いゲームだった。粘り腰の赤が華麗な黄を押し切るという構図になったが、色彩的には華やぎがあった。青い空、緑の芝生がプレイヤーを際立たせている。観る側にとっては、あざやかな色彩の躍動は楽しいものだし、勝負の境目も見分けやすい。では、プレイする側はどうか。市民マラソンを走る私の経験からすると、美しい色彩と疾走感はリンクする。あるとき、見慣れないタイプのウェアと最後に並走したので、あとで尋ねてみたらロードレーシングチームのものだった。なるほど、確かにスピード感は高まり、おおいに刺激をしてくれる。色のもたらす効果は大きいのだ。
最近、デンマークのグラフィックデザイナー、ペア・アーノルディ(1941-)が作品集を贈ってくれた。アーノルディとは2度仕事をしたことがあるが、あざやかな色彩感覚に加え、明瞭な戦略眼が備わっている。彼の仕事は人を動かし、空間を楽しい空気で充たすものだ。作品集はノーマン・フォスター(1935-)との協働作品を特集したもので、建築家の充実ぶりと呼応してダイナミックさを加えてきたようすがわかる。フォスターと言えば、基本はモノクロの建築家であり、普段の表情も厳格。片やアーノルディは色の人。そしていつも面白いことばかり言って人懐っこい。そこがうまく補完できたようなのだ。以前、アーノルディは、自分のジョークにうっかり反応して高笑いするフォスターの写真を見せてくれたことがある。余程この写真を気に入っているらしく、作品集にもちゃっかり載っている。
ところで、デンマーク鉄道(当時、国鉄)でデザインマネージャーを務めたイエンズ・ニールセンとアーノルディとは親友だった。ニールセンは日本の漆の色を好み、デンマーク鉄道でも好んで使っていた。これは、人の動きを引き立たせる選択だ。そう言えば、色だけでなく、デザインとは人をもてなすもの。アーノルディもそう言っていた。