建築から学ぶこと

2012/04/25

No. 323

プロが主役であること

“LSO Discovery”とは、名門オーケストラ・ロンドン交響楽団(LSO)が取り組む教育プログラムの名称である。音楽教室や若い音楽家の指導など、毎年6万人を対象として活動するほか、「子供のためのワークショップを指導する教師」をコーチするメニューも含まれている。地域立脚の試みの先進例であるが、近年のLSOは、WEBを通じてのつながりを拡げることも重視しており、守備範囲は広がっている。LSOマネージングディレクターであるキャスリン・マグドウェルさんは、ピエール・ブーレーズ(指揮者/作曲家)が述べた言葉「オーケストラは<可能性のアンサンブル>(ensemble of possibilities)」が活動のキーワードになっている、という。コンサートホールを飛び出す「アウトリーチ」はこうして進んできた。20年を越えた取り組みの歴史は、さらに充実することが期待されている。

具体的にそれを実践しているのは、LSOに属する奏者たちである。すべての試みは、かれらの熱意と興味があってこそ成立するものだ。<可能性のアンサンブル>とは、楽団のこれからを見通したメッセージであるとともに、個々の奏者がプロフェッショナルとして歩むべきみちのりを指し示している。音楽家として、アウトリーチを自らの役割を見直し拡げる機会と捉えることができるかどうか。LSOに限らず、組織が社会貢献や奉仕の精神を標榜するだけでは、構成員のモチベーションは高まらない。コミュニティの側から見れば、プロが意識と専門技能も高く保ち続けているからこそ、芸術集団に価値を認めているはずである。

これらの話は、シンポジウム「音楽のチカラを伝え、コミュニティをつなげる」(国際交流基金、4月18日)で聴いた内容に基づく。当日は、いわき芸術文化交流館アリオス仙台フィルハーモニー管弦楽団サントリーホールのアウトリーチ活動の紹介もあった。場所や事情は異なるけれども、コミュニティとかかわりあう切り口は明瞭である。それぞれの奏者たちの意欲ももちろんだが、登壇したディレクターたちの積極性は活動のキーとなっている。

佐野吉彦

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