建築から学ぶこと

2014/10/29

No. 447

国際「戦略」のありかた

日本の国際展開は現政権のキーワードでもあり、実際に総理自身が足しげく日本の技術のアピールに出向いてきた。これは通商の土壌づくりであり、あとは企業の事情に即した努力ということになる。先日社長就任パーティを開催した大企業のように、海外の企業買収によって世界市場でのシェアを獲得に動くところもあり、地域の中堅企業が顧客の製造拠点の移転に伴って海外に目を向けはじめた例もある。日本の国際戦略、とひとくくりにできない多様さであり、また同じ業界内でも足並みが揃っているわけでもない。

建築設計分野も同様である。本年の建築士法改正成立に向けて3団体(日本建築士会連合会+日本建築士事務所協会連合会+日本建築家協会)が取った協調体制(あるいは協調の機運)を今後の活動展開の基盤にすれば、デザインのブランド力で国境を越えようとする才能もバックアップできるし、日本が都市の活性化や災害復興、あるいはストック再生などで培ったノウハウ移転も後押し出来るのではないか。施工や隣接技術の国際展開との連動ももちろん必要である。このアクションの進め方の議論をうまく進めないと、日本の建築設計は日本でしか良さが発揮できない、ということになりかねない。

ところで、国際戦略という言い方はもともと軍事用語に由来する。敵を攻め落とすために知謀をめぐらすところから始まった。現代の国際戦略はアジェンダ・セッティング(註:マスメディアで流通する情報のなかから受け手の中に文脈や枠組みが自然に習得されてゆくこと)を上手に形づくりながら、国と国、文化と文化をうまくつないで安定的な市場をつくるかに向けるべきである。そもそもどの通商でも、異なる文化に属する消費者や協力者と良い関係を結ばなければビジネスは成立しないものだ。国際展開における建築の生産プロセスも、善隣外交の観点から構築されることが望ましい。先ほどのアクションをめぐる議論のなかで重要な視点である。

佐野吉彦

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