建築から学ぶこと

2023/08/09

No. 880

北海道に起こる静かな変化

7月末に北海道新幹線の札幌車両基地の起工式に出席した。これで同線・新函館北斗駅から北のすべての工事がスタートを切った。車両基地は、終点・札幌駅から東に延びる高架の上に上屋を設けて作られる。そのために長さ1.3㎞、幅は平均20mという細長い建築物となり、冬場の確実な運行を支える拠点となる。東京と札幌間が全通すれば、青函連絡船を経由して北海道に渡っていた時代とは移動時間も意識も大きく変わるだろう。最近のような酷暑の夏は困ったものだが、爽やかなイメージを保っている北海道にはいろいろな変化が起きている。
さて私が中学生の頃、札幌を含むアイヌ語由来の地名の意味を網羅的に調べてみたことがある。北海道を構成する自然や文化に興味を持ったからだったが、アイヌ文化は消えゆく運命にあるとの印象があった。実は抑圧はその時期(1960年代後半)以降も続いていて、1997年になって「北海道旧土人保護法」が廃止、「アイヌ文化振興法」が公布されてようやく正常化した。さらに2007年の国連による「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を受けて、2008年に国会で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」がなされた。国内にある多様性に目が向けられたのは昔話ではないのである。私が最初に北海道を訪れたのは50年前だったが、多様性の尊重は日本に起こった好ましい変化である。
起工式後に白老に行き、2020年に開場した「ウポポイ」(民族共生象徴空間)を訪ね、エリア内の「国立アイヌ民族博物館」の展示に触れた。ここで、アイヌ文化と言語には豊かな基盤があるだけでなく、文学をはじめとする現代の表現活動にも奥深さがあるとあらためて知る。交通インフラがさらに整う未来が、効率志向ではなくこのような多様性をゆるやかに結びつけ、かつ支えるものであってほしいものだ。

佐野吉彦

国立アイヌ民族博物館

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