建築から学ぶこと

2013/01/30

No. 360

公は企み、民は考える

社会を適切にかたちづくるには、官民が円滑に連携しなくてはならない。それがPPP(官民パートナーシップ)の趣旨である。社会資本の整備を目指してつくられた概念だが、協働するプロセスのなかで良好な人的な基盤ができあがることのほうが大きいであろう。別の表現で言えば、何らかの目標がなければ官と民はなかなか結びあいにくいくらい、思考パターンは異なるのだ。

安倍政権は、<経済成長>を目指すためにさまざまな政策を提言している。前回政権時が<戦後レジームからの脱却>であったことを思えば、ずいぶん現実的な「看板」となった。それは民主党政権の後という事情もあるだろう。その民主党は菅政権のときに<最小不幸社会>というキーワードを使い、それなりの存在感を放っていた。このように、日本の政治(だけではないが)は状況によって大胆な仮説を据えようとする。たとえば、橋下・大阪市長がこだわるテーマは<組織の風土改革>であるように見える。

ところで、ソニーは自社のソニーシティ大崎や、米国本社ビルを売却する動きがあるという。今年に入っての急展開だが、企業活動の日常に変化があるわけではなく(建築にも変化はない)、経営面で資産圧縮を進めているなかでのチョイスに過ぎない。政治家とは違い、民間は仮説に基づいて行動したりはしないのである。一方、アルジェリアでの悲惨な事件に見舞われた日揮は、いっそうのリスクマネジメントを徹底して、引き続いての海外展開を続けるだろうし、その覚悟はできていると思う。この事件について言うなら、政府が果たす役割がこれからあるはずで、それほどの体勢が整っていない企業の海外活動に対して、情報入手や有効なサポートで先手を打つことが期待される。先を読む気概がなかったり(予想が外れることは問題ではないのだ)、民間と連携できなかったりする政治では役に立たないのだから。

佐野吉彦

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