建築から学ぶこと

2019/06/26

No. 677

法律の百年

「東京市区改正条例」が生まれたのは1888年だった。そこからさき日本の各都市は著しい発展を見せ、追いかけるように1918年に5都市(京都・大阪・横浜・神戸・名古屋)にも条例が準用されることになった。1919年の「旧都市計画法・市街地建築物法」はその延長線にある。これらの法律は戦後に1950年の建築基準法、1968年の新・都市計画法へと置き換えられてゆくが、その遷移が日本の近代の発展を支えたことは間違いない。という次第で、今年は「都市計画法・建築基準法の制定100周年」という祝われかたをする年になっている(関連団体などにより、記念事業実行委員会が組成されている)。
日本の都市の「形式」(OSという言い方もある)は、概ねこの流れの中で定まってきたと言えるだろう。そのなかでは1981年の新耐震基準や、2002年の都市再生特別措置法は都市景観に大きく影響を与えた節目であるかもしれない。そうして現在の日本を見渡すと、人口維持と国際競争力において日本は手詰まり感があるし、うまく整えてきたはずの都市景観もバランスを欠き始めている。大都市の優良地には高層住宅が卓越し、郊外のロードサイドの商業が集積している状況は、法律の運用改善では整序が難しくなっていることを示している。
それでも、このような現状を嘆くだけでは前向きでない。これからの社会、たとえばデジタルエコノミーや多文化共生などのテーマに向きあうなかで、法律の体幹をしっかりさせながら、どのように現実に近づけるのか。法律を問い直すチャンスでもあるが、法律を新たな実験的な取り組みをするための契機として捉えるというやりかたもある。長年の知恵の蓄積をもう一度読み返すには、100年目はいいタイミングだ。

佐野吉彦

重みのある節目

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