建築から学ぶこと

2018/08/01

No. 633

自らも、日本も生き残るためのBIM

BIMは、新しい設計製図手法としても、建築生産プロセスにおける情報共有のツールとしても効力が実感されるようになってきた。7月後半の私は、BIMに関連しての意見交換に参加する機会が集中し、あらためてBIMをめぐる状況を捉えなおす場に恵まれた。それほどにBIMは注目を浴びるテーマには違いないが、果たして建築界あるいは社会での定着は磐石で、今後の伸びを期待してよいだろうか?
もちろん、BIMは大量かつ複合化する設計情報と顧客ニーズを統合・格納するために効果的である。設計者側からみれば、その機能を駆使して、発注者と設計・施工・維持管理にかかわるプレイヤーを結び付けて有効にマネジメントできる。それはつまり、設計者がこの世で生き残るための革命的手段になる。一方で、発注者である企業や行政、あるいは施工者が同じような野心を燃やすことがありうるだろう。それも歓迎したい。リーダーが誰であっても、地域社会にあるさまざまな情報をBIMデータによって集約するアクションは、社会の発展と維持に大きな力となるはずだからである。
ところが、日本社会のプレイヤーたちはそういう野望が弱いように見えてしまう。施工会社は、洗練度・密度の高い施工データを、設計データと合体させて使ってはいない。BIMに長けた設計事務所も、施工者にデータを渡した時点で、データがその先に活かさずに作業を終了してしまう。社会の中で作業が重複していて、既存の建築生産システムを何ら壊しておらず、生産革命につながっていない。
このようなBIM活用では、逆に日本の次世代の足かせになる。ある学者は、日本が今後、経済を成長させるには、労働人口の増加、資本投入、生産性の向上が欠かせない、という。この3番目を達成するためにBIMは有効であるはずで、もっとその可能性を建築界として追求すべきではないか。日本のBIMの進展度が他のアジア諸国に比べて鈍いことを危機と捉え、生き残りのためにBIM進展をさらにプッシュしたいものだ。

佐野吉彦

大隈会館で、日中のこれからの高齢社会をめぐる議論。ICTやBIMをいかに使いこなすかも鍵である。

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