建築から学ぶこと

2014/01/15

No. 408

コミュニケーションが生まれた日に

キリスト教のクリスマスは、1月最初の日曜日(2014年は1月5日)まで続く。この日は「主の公現」(主顕節)と呼ばれ、東方の三賢人が生まれたばかりの主イエスを訪ねて贈り物を献げた日とされる。救世主生誕の社会的認知がなされたこの日を、スペインでは1月6日を祝日として固定し、三賢人(役)が子供たちにプレゼントを配りに来る日(こどもの日)としている。ここでの賢人はつまりサンタクロースと似た役回りで、もはや宗教行事とは言えない。子供たちは前夜までに三賢人に欲しいものを手紙に書いて掲げておく習わしなので、贈り物のマッチングも可能である。重要なのは、かれらが手紙というコミュニケーション手段を使い出すモチベーションになっていることであろう。

マッチングが成立することは幸せなものである。災害救援で言えば、被災直後は被災地の誰もが苦しんでいるので、一般的な募金でも相互の思いは一致する。だが、それは期間限定である。ロングスパンの福祉政策や社会保障などの社会政策で底支えすることは考えるべきだが、時間が経てば、公的な資金投入以上に、被災地で自力再建する個人や事業体への個別の「肩入れ」が、地域全体のエネルギーを押し上げる。東方の三賢人も、スペインの子供も、個人のアクションとコミュニケーションから事を始めた。マッチングはそこから始まる。1月17日で19年を経過した阪神淡路大震災からの神戸の復興も同じ道のりをたどっているのだ。

2者の間のビジネスや、離れた地域同士のビジネスマッチングを持続させ、富を生み出すこと。それは資本主義社会が、災害や戦争などの苦難を乗り越えて繁栄を続ける要諦である。その点で言えば、日本と周辺諸国の建設市場を相乗的に活性化するためには、地域や国境をまたぐマッチングを促すシステムや機構を充実させる必要があるのではないか。

佐野吉彦

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