建築から学ぶこと

2012/10/03

No. 344

にぎわいづくり春夏秋冬

第34回サントリー地域文化賞の表彰式に出かけた。丹精こめて継続している地域行事を表彰するもので、毎年5件。独創的なアイディアで動き出した企画が、うまく人のつながりを拡げながら鮮度が落ちていないことに眼を開かれる。この表彰式は表彰者の素朴な声が聞けるだけでなく、時にそれぞれのパフォーマンスも楽しめる、短いながら楽しいひとときになっている。会場にはこれまでの受賞者も招待されていて、私が活動にかかわっている第29回受賞の<取手アートプロジェクト>のチームも顔を見せていた。グループどうしの懇親を促す設営はとてもあたたかで、たとえば取手と富山が和やかに交歓しているのはなかなかいい光景だ。

今年の受賞は山形県置賜農高(山形)、伏木相撲愛好會(富山)、山口鷺流狂言保存会(山口)、イサム・ノグチ日本財団(香川)、俳句甲子園実行委員会(愛媛)という個性的なラインナップ。活動の中核世代はいろいろだが、広く世代を巻き込み、普遍性とオープンさ、新鮮さを備えた魅力に富んでいる。これまでの受賞者を含めて共通するものがあるとすれば、1つ目には無理のない継続的な予算確保の努力があること。2つ目にはすぐれた建築あるいは広場のような、活動にとって適切な土俵を有すること。3つ目にはそこに高いスキルを持つ専門家が関与していること。4つ目には活動を支える新世代を指導する教育システムを備えていることであろう。たとえば鷺流狂言保存会は、町民が学んだ「武家のノウハウ」を絶やすまいとする心意気によって、定常的な研鑽プロセスが保たれている。

いずれにせよ、長く続けることは長期にわたって地域の価値を高めるものである。第1回の1979年の時点と比べると情報技術ははるかに進歩し、地域外からの活動参画も容易になっている。地域でさりげなく始まった活動はやがて広い範囲に共有される社会的資産となり、継続発展への期待(あるいは責任)は高まってゆく。そうした変化が活動の新たなモチベーションになれば一層楽しみである。

佐野吉彦

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