建築から学ぶこと

2010/05/26

No. 230

ポジティブに認識し、構想すること

生まれたときから、人は身体という直接のセンサーを介して環境との間合いを測り、そこから情報を吸収して体系化し、自らを形づくってきた。行動能力も言語能力も、環境の認知からはじまり、他者とコミュニケートするプロセスを通じて鍛えられる。人が、生物としての原点をそのように意識しつづけることは重要である。身体が見出す知、という認識は齢を重ねても有効に働く。未知のものとの出会いにおいて間合いを計り、そこからより良く学ぶことは生きることの基本と言えるのではないか。この時代に出会う、前例のない事象に、経験的知識に頼ることなく向きあうとき、その認識は適正な判断を導くはずである。

こうした、人間に備わるポジティブなメカニズムを、実際にロボットを製作することで明らかにしようとするのが、浅田稔さん(大阪大学大学院工学研究科教授)である。この研究手法は「構成論的アプローチ」と呼ばれるもので、自立的な知的操作の能力の生成について解き明かしている。学ぶ者、学び続ける者としての人間の実像に迫ろうとしている。さらに浅田さんや石黒浩さんといった、とてもポジティブな工学の研究者たちは、ロボットの潜在的な能力、社会において役割を担うことの可能性を探っている。ロボット相互のコミュニケーションやフィードバックはどこまで可能か。彼らは、かつての都市構造が、車の存在を前提とした都市構造にスイッチされた経過をふまえながら、人とロボットが適切に共生共存する社会を構想してみている。それは、人類史上、いまだ成功していない共生社会のモデルと言えるかもしれない。

【前回の追記】
第229回で言及した荒川修作展に関連してシンポジウムが開催され(5月16日、京都工芸繊維大学美術工芸資料館)、私は、平芳幸裕さん・米田明さん・小野暁彦さんとともに、展覧会の「主役」と各々との関わりに即して論じあった。私が報告した、建築プロジェクトにおける協働作業は、荒川さんのなかの最も直近のステージと言えるが、数日後の荒川さんの逝去によって、それは最後のステージとなってしまった。多彩な表現形式を用いて「試み続けた人」は、様々な協働者に、社会を問い直すというテーマを託していったようである。私は、ペシミスティックな態度では受け継がないつもりだ。

佐野吉彦

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