2020/11/25
No. 747
国家や自治体、企業がSDGsに熱心に取り組むのは大歓迎である。しかし、環境はひとつながりのものだから、取り組む主体が連携し役割分担することで、初めて目標は達成可能となる。先進国が成果を達成しても、開発途上国にしわ寄せがかかれば、地球環境の劣化を止めることはできないのである。
ところで2021年初頭から、ウグイスの初鳴きや、桃の開花の知らせがなくなるという。11月10日に、季節の移ろいを捉える「生物季節観測」を6種9現象に限定する、と気象庁が発表したのである。動物23種は全て廃止し、植物は桜の開花・満開などの一部だけを残すことにしたという。気象庁は、もともと10年ごとに対象の見直しはしており、2011年には「直近30年で8回以上観測できなかった動植物」を観測対象から外すことを決めていたようである。急な路線変更とは言えないが、ここまでの大幅削減は衝撃的であった。
気象庁は、気象台や測候所周辺の生態環境が変わり、標本木の確保や対象動物を見つけるのが難しくなった、という説明をしている。とりわけ、動物の出現が季節の変化を表していないとの説明もあるようで、そこから環境危機進行の深刻さが伝わってくる。それなら、警鐘を鳴らすためにも、改善の効果を測るためにも、観測の継続は必要なのではないかと思うが、気象庁は、観測の目的が違うとも述べている。植物のように温暖化に連動して変化があるのなら良いが、動物は気候変化の指標にいまやなりにくいというのである。もしそれが気象庁のミッションに合致しないなら、あるいは予算と人員の制約があるなら、適切な機関に移管して継続するのはどうだろうか。季節の兆しと生態変化の関係を丁寧に継続観測する作業は、日本発の、世界に資する発信であると感じる。
付記:気象庁によれば、残すのは(1)アジサイの開花(2)イチョウの黄葉・落葉(3)ウメの開花(4)カエデの紅葉・落葉(5)桜の開花・満開(6)ススキの開花。廃止するのはアブラゼミの初鳴きや、テッポウユリの開花など。