2007/08/01
No. 93
外務省が1960年から毎年続けている「アメリカにおける対日世論調査」によれば、対日信頼度や、現在の日米協力関係を良好と考える割合などが<過去最高のレベル>に達している。ひとまず外交努力が成果を収めていると見て間違いはないだろう。設問は一般・有識者に分けて聞いているが、あくまで問うているのはイメージであるから、手元に良い手がかりがあるかどうかが鍵だ。つまりこの好結果をもたらしたのは、政治的パフォーマンスよりも、日本から発信する情報が増加したことによるのではないかと思う。質の高い情報を継続的に提供することで、そこに反応が起こってポジティブな動きが始まるというサイクルがありそうなのだ。ちなみに、日米貿易不均衡の原因は何か?という問いにも「米産業の競争力の問題」とする答えがこの10年で大きく増えている。
そこで、まだ強化の必要のある文化交流というテーマについても考えてみたい。思えば、フランク・ロイド・ライト(1867-1959)が日本建築に影響を受けたとされるのは、優れた日本建築を経験したゆえだった。ライトは1893年のシカゴ博覧会の日本館(鳳凰殿)で日本の空間構造に触れ、1905年に日光東照宮でそれを確認し、ユニティ教会で具現化した、とされる。日本建築を正しく受容したからこそ、その知的所産に豊かさが加わったのだ。この逸話には学ぶべきである。
このケースで、ライト自らは影響を受けたとは語っていない。一方、現代の建築家であるピーター・グラック(1939-)は日本から知恵を学んだことを表明している。彼はデザインだけでなく、日本の設計施工がもたらす「作品の総合的成果」にも着目しながら、建築家主導のデザインビルドに取り組んで作品の充実に成功した。彼の場合もまた、つまみ食いではない受容が功を奏した点で同じと言える。
こうした建築を含めた文化交流こそ、知的刺激にも、良好なイメージ形成にも有効である。でも、それは「文化と文化の交流にはとりわけ入念なケアが欠かせない」(伊藤・在米日本大使館広報文化センター長)もの。どこの国も同じだが、継続的に、そして筋道立てて正しい情報を発信することは重要であろう。