建築から学ぶこと

2007/02/21

No. 71

プレファブ住宅との日々

数回ほど、住宅メーカーと一緒に住宅デザインコンペを企画・運営したことがある。最初のきっかけは技術開発チームからで、新開発の優れたプレファブリケーションシステムをできるだけ広く売りたいという話だった。さらにつきあって聞いてみると、販売サイドはこれを使って、顧客ニーズに対応した自由設計ができるデザイナーズ住宅を看板にしようとしていた。こういう気運をどう展開したらよいか?と聞かれたので、じゃあ公募のコンペをやりましょう!と提案したのである。

そこに至るまでには、誰かデザインできる人を数人紹介してほしいという発言もあったのだが、それでは話題性が足りないと感じた。せっかくだから広くアイディアを募ってみましょう、コンペに応募するあいだは要項を懸命に読むから、うまく商品情報も広がりますよ、という提案である。応募条件は実務に携わっている人。ここではさらに、優秀作品を選んだ後、そのなかから主催メーカーは仕事のパートナーを選ぶという流れをつくった。

さて、このコンペの審査には著名な建築家・専門家に声をかけ、私もそのチームに入って2度ほど続いた。そうしていると、今度は主催メーカーのインハウスの設計担当者に提案を作らせるから、その作品を審査してほしい、ということになった。想像するところ、コラボレーションに走るよりも、インハウスの能力を高めることが企業としてより重要と感じたようだ。これも2度ほど関わったが、彼らのプロ根性に触れるのは面白い経験だった。ただ、コンペを提案したのは、企業が社会と意外性を伴うネットワークをつくってゆくこと、そこから新しいアイディアを生み出すことであったので、趣旨は当初のねらいとはやや違う展開となった。

住宅メーカーと設計事務所は、同じように日本の景観を形成する仕事をし、教育機関で同じ教育を受けながら、実務では日常的な接点が少ない。コンペはその垣根を越える試みだというささやかな自負があった。おそらく、表彰された方は主催メーカーに対して好感を持ったと思うので、ここには今後の可能性が宿る。というわけで、今後も、いろいろな企業や地域で「相互乗り入れする試み」に取り組んでくれないかと期待している。

佐野吉彦

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