建築から学ぶこと

2019/01/09

No. 654

言葉は未来を切りひらく:2019

昨年から続く、米中の意地の張り合いは世界経済にどう影響を及ぼすのか。そこは気がかりな年明けである。本棚の古い本を取り出してみると、「英語と日本語は、少なくとも文法という点では世界で最も簡素な言葉である。言葉というものは、時がたち、広く使われるにつれて単純化する傾向があるのだ。言い換えると、言葉を喋る人が多いほど、その言葉は単純になるわけだ。」とある(「ベルリッツの世界言葉百科」:新潮社)。これは1982年の言だが、両国の応酬が直情直截にならぬように祈りたいものだ。なお、同じ本にはトルコの峡谷の町・クシュコイが独自の<指笛による言語体系>を確立しているとの紹介がある。霧深い自然条件が、鳥の啼き声と似た音韻を育てたのだが、その後携帯が孤塁を脅かしたと言われる。スマホの登場以降はどうなっているだろうか。どうも、オーラル・コミュニケーションは危なっかしい。
さて初出の1月4日、大阪の財界が集まって開催された「大阪新年互礼会」には、昨秋に2025年万博誘致が決定したこともあって、「安堵」の空気があった。まずはハードのまちづくりのイメージが先行する一方で、ホストであるこの地域は、いかに異質な知恵をスパークさせ、あらたな産業創造に導くかを構想することが重要となる。そのためには現実にあるコミュニケーションの壁をどう賢く乗り越えるかがカギだろう。この日あいさつに立った、大阪商工会議所会頭の尾崎裕さんはそのポイントを巧みに説いてみせた。話の前半で、文化の固有性・多様性の尊重を重要としつつ、そうして「万博には世界から人が集まり、人工知能(AI)を駆使した自動翻訳機ができているはず。各国の歴史や伝統、価値観を反映した言語をどこまで翻訳できるかが楽しみ」と続ける(産経新聞WEB版記事による)。なるほど、示唆に富む話である。言葉は、正しく使えば未来を切りひらくのだ。

佐野吉彦

2019年を切りひらく

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