2020/07/15
No. 729
私は、先月から今月の2つのオンラインコンサートの企画運営に加わった。一つ目は青柳いづみこさんと谷川賢作さんが登場する<平河町ミュージックス「WEBリサイタル」>(スタジオ収録)、二つ目は関西フィルハーモニー管弦楽団所属奏者による<オンラインによる弦楽四重奏コンサート>(当社ロビーからのライブ)であった。どちらも私には縁のある音楽家たちで、演奏曲目に注文を出してはいない。でも私は、この新しいやりかたへのチャレンジを提案し、だからこそぜひ自由なプログラムでどうぞ、とは言っている。今年ならではの知恵が、新たな演奏スタイルのはじまりであり、そこに触発されるファンが増えれば面白いと感じていたのである。
これらでは、同時に投げ銭方式によって演奏者への応援チケットを募ってみることにした。それは演奏の熱さに比例して<手ごたえ>が積みあがる仕掛けである。このような相互作用によってお金が動くことこそ、まさしく<ボランタリー・エコノミー>というべきものだ。ほかにも、チャットなどによるコメントで演奏者にフィードバックすることによっても間接的な効果が生まれている。こうしたメカニズムはCOVID19によって流れが加速することになったが、これまでおおよそ20年ほどの経済や社会のシステムの変化に、ネットワーク技術がようやく追いついて実現した世界と言えるだろう。今回はこの変曲点を目撃した意義深い機会であった。
ところで、音楽にせよ演劇にせよ、オンラインはリアルとの差がある、という認識もある。では実際のところ、オンラインはリアルの止むを得ずの代替なのか、リアルを魅力づけるためのアシストなのか、リアルをしのぐ新たな展開なのか。きっとそれは表現する者の戦略次第であろう。オンラインで感動を与えるには、少なくとも真剣なコンテンツ(パフォーマンスの質と創造性)なしでは生まれないはずである。芸術の与える感動が時代を越える、とはそのような意味においてではないだろうか。