建築から学ぶこと

2023/12/06

No. 896

晩秋の、気持ちの良い午後

取り組みが進んできた、公営住宅や再開発ビルの空洞化対策、空き家問題、高齢社会対応、木材活用などは、一見ハード面の対策に見える。しかし、それらの解決にコミュニティの活性化や課題解決をうまく重ね合わせれば、最適な解に導くことができる。単なる建築物除去ではストックを活かすことにはならないし、脱炭素社会に方向に逆行する。この国を次のステージにうまく進めるために、こうしたテーマで地方自治体あるいは民間から優れた変革例をスタートさせることが重要ではないか。それによって現行の法律をスムーズな使い方に持ち込めるからだ。となると、建築設計者には、与条件を形に置き換えることなどではなく、未来のために積極的に関わってゆく使命があると言えよう。
いま、ある地方自治体で公共施設の設計業務が始まり、著名な建築家との共働がスタートしている。その自治体の長から招きがあって、その長+著名建築家+私でトークショーをするために、庁舎に向かった。大会議室に集まっているのは自治体職員と議員全員だが、そのトークショーは後日YouTubeで配信されるのだという。このように、設計の初期段階で、ビジョンの解説や住民への呼びかけの場が設定されるのは珍しいことだ。
この地には、戦後に住民が厳しい気候に向き合いながら農地開拓に取り組んだ歩みがあり、さらに近年に合併した自治体である。彼らにとっては新しい施設づくりは心をひとつにする格好のチャンスである。住民参加を活発化させましょう、この機会に人を育てる地域にしましょう、環境建築をつくりましょう、あらたな働き方のモデルとなる場にしましょう、などの具体的提言を近い距離で聞いてもらえたが、最初にお互いが腹を割っておくのは悪くない。
その日はひとつの公共施設づくりが国を変える予感さえした。紅葉に包まれた日は、望ましい未来が静かに始まる日でもあった。

佐野吉彦

実る秋。

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