建築から学ぶこと

2013/08/07

No. 387

小さく繋ぐ橋に吹く風、宿る魂

ゴールデンゲートブリッジや明石海峡大橋といった巨大橋梁には、技術のチャレンジがあり、結果として通過交通が経済を大きく動かすことになった。そのダイナミズムには敬服するとして、ここでは小ぶりな人道橋の持つ親密さ、地域定着感に注目したい。たとえば、パリ・セーヌ川を跨ぐシモーヌ・ド・ボーヴォワール橋では、橋を渡る時間をいかに楽しむかに留意したデザインが試みられている。地区を繋ぐだけではなく、橋それ自体が目的地となる居心地の良さがある。米コロラド州・デンバーには、ダウンタウンの16th・streetから鉄路や川を跨いで住宅地へと延びてゆく表情豊かな連続橋が、歩行者の安全で緩やかな動きを誘い出している。この2つは、ギャップを小さく丁寧に跳躍したことで、長続きする成果を得た例と言えるだろう。

それに比べれば、兵庫県西宮市の港湾近くにある御前浜橋は、特記すべきデザインでもない。だが、興味深いのは場所柄、可動橋/跳ね橋になっていることで、週末には歩行者を止め、一日4(夏季5)回ほど跳ね上げて歩行者を止め、船を通している。一見静かな表情の橋にあるダイナミズムは個性的で、一日の中にいいリズムを刻んでいる。有名な跳ね橋では東京都中央区の勝鬨橋が有名だが、現在は動かないので、跳ね橋の歩道橋という稀有な日常はずっと維持してほしいものだ。ちなみに、かつて国鉄佐賀線(廃止)で使われた筑後川昇降橋は、直上に桁が持ち上がるタイプの可動橋でこれも類例が少ない。今は歩道橋となり重要文化材にも指定され、川を跨いだ知恵が伝承されることになった。

ところで、東京都千代田区の隣接した2つの面開発<お茶の水ソラシティ>と<ワテラス>との間を、小さなブリッジが結んだことで新たな人の流れが生まれた。充実したプログラムの開発を達成した事業者間の連携のゆえだが、だからこそブリッジとそこに至る両サイドの道の風情にもう少し高揚感が表現されてもよかったかもしれない。

佐野吉彦

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