2024/04/17
No. 914
この春は、北陸新幹線や大阪メトロの延伸もあったが、地方の鉄道路線の廃止は相変わらず進行している。まずその流れのデメリットを指摘しておくと、鉄道がなければ通学などの定時大量輸送、緊急の貨物輸送に支障が生じる。カーボンニュートラルの観点では、鉄道は車やバスに優るだろう。もっとも、鉄道路線の保全は手間がかかるものだし、ローカル線が現状の乗降客のままでは採算が取れない。鉄道を維持するには、補助金があったとしても民間企業の努力に頼るのは限界がある。結局は、長期的に見ての解決策がないまま、路線消滅だけが進行している。
考えられる解決策は、官民共同で鉄道を生活手段として確保することだろう。だがここではそうした救済策を提唱するだけでなく、鉄道路線という長い<ひも>を地域の活力源とする着想が当事者に不足していたことも問題にしたい。鉄道の持つ普遍的なシステムは誇るべきものだが、地域固有の使われ方の掘り下げは弱かったのではないか。たとえば各駅それぞれ、あるいは走る車両内に医療や教育などの異なる機能を実装させれば、鉄道路線はおのずと利用頻度が高まるに違いない。駅周辺もこれを契機に活性化するだろう。路線全体で相補しあい、完結する公共インフラができあがれば、<ひも>は太い<帯>になり、地域の新たな吸引力になる。
なお、こうした策は鉄道だけに起こっているのではない。2拠点間を直接結ぶ空路であっても、港を一筆書きのようにつなぐ海路であっても、いやオンラインのネットワークであっても、近隣で共有する回覧板でも、結ぶことは第一ステップに過ぎない。<活用されるためのデザイン>がなければ、インフラはやがて廃れてしまうに違いない。鉄道に起こっている非情な現実を乗り越えるには、新しい構想力が必要である。