建築から学ぶこと

2015/04/22

No. 471

学びは開かれ、人も都市も変わる

日本とドイツの間には深い縁に基づく試みがある。たとえば、2国にある6大学は、2010年に「HeKKSaGOn」と名付けた大学ネットワークをつくった。この名はハイデルベルク・京都・カールスルーエ・仙台(これは東北大)・ゲッチンゲン・大阪のネットワークを順に並べたもので、六角形(ヘキサゴン)のかたちの協力関係を示している。都市名を掲げているところに、大学こそが都市力を支えているという自負が感じられる。

さらに、2015年春には、ハイデルベルク大学は京大キャンパス内に京都オフィスを設置した。彼らにはサンチャゴ(チリ)、ニューデリー、ニューヨークに続く国際拠点となり、京大にとっては昨年開設したハイデルベルクオフィスと相対する関係ができた。これらの使命は専門的な分野を究めるためのサポートというより、その都市の持つ情報や人的資源とどう新たな線を結ぶかが重要となる。今や、大学が保有していた情報を開きながら、蓄えてきた知的資産をどのように社会にスピンアウトさせるかは都市発展の鍵を握っている。大学も都市も、その将来の可能性をグローバルな視点で認識しようとしているのであろう。

ところで、最近の大学図書館には、アクティブ・ラーニング・スペースとか、ラーニング・コモンズとか、能動的な学びの場・共創の場が設けられるようになった。これらは大学そのものの変革の象徴といってよい。何を目指して知の深掘りをするかは今も昔も重要だが、外につながる感覚のなかで新しいテーマを発見するのは自然なことである。大学キャンパスデザインがアカデミックな姿をまとい続けるのは、もはや時代遅れになってきている。

 

付記 都市ハイデルベルクについては、第428回記事でも紹介した。

佐野吉彦

アーカイブ

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

お問い合わせ

ご相談などにつきましては、以下よりお問い合わせください。