2021/03/31
No. 764
東京2020オリンピック聖火リレーが3月25日にスタートした。そのことは素直に喜ぶとして、ここに至るまでには紆余曲折があった。大会がアスリートファーストで安全重視であることは間違いないのだろうが、経済優先との符合がいまだよくわからないところがある。もっともこれはオリンピック・パラリンピックが恒常的に抱えてきた課題であり、新型コロナウイルスに端を発したわけでもない。一方で、IOCはオリンピックレガシー(2013)の中で大会後に残る有形無形のソーシャルキャピタルについて明確に述べている。お祭りを計画通りやり遂げる以上に、大会後の新たな流れがちゃんとできていた、というのは重要である。
これはもちろん施設整備だけのことではない。2013年に東京誘致が決まった時の安倍首相のプレゼンテーションはなかなかいい提案を含んでいたので、それをこの連載第392回に書き残した。私が、「総理が語った<3000人の若者がスポーツインストラクターとして国際的に活躍>のくだりは得点を稼いだかも知れない。国際大会で、自発的な国際貢献の姿勢を訴えるのはポジティブである」と感じたところは、いくらかそういう人材が育ってきているようにも思う。首相はそれをいつまでにとは明示していなかったので、ぜひこれから勢いをつけるといいだろう。
さらに、私はこう続けていた。「プレゼンテーションでは、環境政策で先進的な成果を挙げている都市であることにあまり触れていなかったが、これからの7年のなかで、環境面で前進する施設整備と大会運営の達成は期待したい。とりわけ、交通渋滞と大気汚染に悩む近隣アジアの大都市が多々あるだけに、東京が克服し、取り組みポイントは大いに範となるだろう。つまり、それも国際貢献である」と。この7年間、東京の取り組みは目覚ましかったが、アジアの各都市の本気度はさらに高かった。だからこそ東京はアジアをさらに先に導くヴィジョンを持たなければ、レガシーを残したことにならないのではなかろうか。