建築から学ぶこと

2024/07/17

No. 926

法律と建築と建築界と

国内で生活や仕事をする限り、私たちすべては日本の法律の保護下に置かれる。建築界と呼ばれる、建築生産に従事する人々で構成される大きな勢力も、法がもたらす制約と自由に支えられて活動してきた。具体的には建築設計者にとっては<建築士法>、施工者においては<建設業法>が直接関係する。それゆえに、建築の専門団体はその改正改訂動向に敏感になり、必要あれば是正を目指すアクションを起こしてきた。そのほかの<民法>・<労働法>・<会社法>などはすべての領域に関係するから、建築の実務側からだけでは意見を申し立てにくいかもしれない。もっとも、近年注目される<働き方改革法>は仕事の手順を大きく変えるものだから、ここだけは建築界は入念に対応の準備を重ねてきたのではないか。

ちなみに私は建築企業年金や建築健康保険組合の名を冠する、独立した法人の運営にかかわりを持っている。ここで登場する厚生労働省管轄の<厚生年金保険法>などをめぐる変遷は、建築界の歩みとは別に整備されたり、改革されたりしてきた。建築界は自らの安定的な成長に取組みながら、資金を着実に確保・運用して適正なサービス提供を維持してきたと言えるだろう。

一方で、法律は建築そのものを確実に変えてきた。それはまず<建築基準法>の積極的活用が大きな推進力となっている。構造や環境では遵守すべき事項が増加しているが、法の改革によって新たな想像力が刺激されもした。1950年の法施行からの経緯は差し引きプラスと言ってよいだろう。そのほか、<老人福祉法>や<介護保険法>、<旅館業法>などは、じつは個別の建築のありようを変えている。いわゆる発注形式にかかわる法律、たとえば<PFI法>のような、建築の品質に影響を与え、建築界の役割分担を変えているものもある。これは活用の成果を継続して見守る必要はあるのだが。

 

佐野吉彦

オベリスク造形:法も建築も、起源はエジプト

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