2020/02/26
No. 710
今回の話題は私事に及ぶ。先日、家族の結婚式と披露宴があった。婚約式から8か月ほどであり、それはまさに両家連携による準備の日々であった。いろいろなアイディアを出しあい、それらをほぼ整え終えようとした時期に、社会に前回述べた感染症の影響があらわれ、各地でイベントの中止が始まった。そこで開催3日前に両家一致して「開催は予定通りですが、新型コロナウィルスの流行が懸念されますので、発熱や風邪症状には十分ご留意ください。会場入口にはアルコール消毒液を設置するなど衛生保持に努めますので安心してお出かけくださいませ。今後も状況に応じてご案内申し上げます。」というメッセージを参加者にお知らせすることにした。結果として、国内外からの来訪者に安心感を提供できたと感じる。
それにしてもこうした事情の中での判断は難しいし、タイミングが変われば違う判断があるかもしれない。また人が、危機に際して潔く退く選択と勇気をもって進む選択のどちらを経験したかは、ひとりひとりの原体験となっているはずである。それゆえ、一般的にはどちらが妥当かはなかなか議論が噛みあいにくいようだ。
私にとっては、2011年秋のUIA(国際建築家連合)東京大会の運営委員会の一員として、東日本大震災直後に、開催の可能性について議論を重ねた経験が生々しい。ここで、国際大会の予定通りの開催への手立てを尽くし、このときに正しいメッセージ発信をした経験が、今回あくまで遂行するための心の支えとなった。披露宴の最後の挨拶で私は「婚約から今日の婚儀祝宴まで、両家は協力しあって準備を整えてまいりました。これが皆様にお見せしたいくらい楽しい時間で、すでに両家は心の通いあった関係ができあがっております」と触れたのだが、きちんと乗り越える経験はいっそう絆を強める。それにしても健やかで穏やかな春が待ち遠しいものである。