2013/12/25
No. 406
小渕政権下の1999年に「男女共同参画社会基本法」が公布・施行された。その2年後、小泉政権下の内閣府に「特命担当大臣」と「男女共同参画局」が設置され、今日に至っている。局の前身は総理府に設置されていた男女共同参画室で、少子化が社会の話題となってきた1994年の発足だから、女性の社会進出と少子化、高齢化社会をめぐる問題は隣りあわせで進んだようである。育児・介護休業法の整備も並走している。現在、男女共同参画局には「仕事と生活の調和推進室」があり、2007年策定の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」に基づく政策の推進がなされている。
ワーク・ライフ・バランスというキーワードに含まれるものは、雇用者と労働者間にある労働時間問題であり、男女均等社会の実現や雇用拡大の課題でもある。すなわち、複数のステークホルダーが連携しての目標設定、そこに向けての個々の努力があってこそ実現するもので、達成に向けてはそれぞれ骨を折る覚悟が必要である。そのためには将来社会からのバックキャスティング、すなわち目標となる社会イメージを共有して現在の取り組みを考えてゆくべきであろう。
どのような社会が日本にとって望ましいのか。ワーク・ライフ・バランスのコンサルティング等を進める小室淑恵さん((株)ワーク・ライフバランス社長)によれば、多様な働き方(生き方)こそが企業の活力・能力を高めるはずであり、そのためにも職場以外での家族・地域社会に責任を果たす時間(介護・養育・コミュニティ活動)を確保すべきだと述べていた。企業の実力と収益を最大化しながら、社会を維持するための費用を節減することは、個々の努力においては相反する部分があっても、到達点においては矛盾しない。ここで建築界が建築生産システム改革に加えて働き型変革を先取りすることも重要だ。建築こそ、次の時代のかたちを考える専門分野なのだから。